11月1日に開催されたFOMCでは、投票メンバー9人の全員一致で政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標値を年1.00~1.25%のまま据え置いた。9月の前回会合では量的緩和で膨らんだ保有資産の縮小開始を決めた。次のステップは再利上げとなったが、そのタイミングは12月となるようである。
今回の会合後に公表した声明文のなかでは「緩やかな利上げのもとで、経済の改善が続く」との見通しを示したことで、12月の次回会合での追加利上げを示唆した格好となった。足元経済がしっかりしているのであれば今回の会合で利上げを決定してもおかしくはない。
今回の会合で利上げを見送ったのは保有資産の縮小による影響を見定めたいとの要因もあったのかもしれないが、ある程度のタイムスケジュールを意識したものとも言えなくもない。
特に緩和策ではなく結果として引き締め策となる正常化は市場の動揺を抑え、できるだけ事前にそれを織り込ませる必要がある。これに対して緩和策は市場がそれを期待しているタイミングで行う方が効果が出る。ただし、この効果とは実態経済への直接効果というよりも市場の動揺を抑えることが主目的となる。
利上げのタイミングを12月としているのは、12月のFOMCでは議長会見が予定されていることも影響している。正常化のステップの際の政策変更は、これまでも議長会見が予定されているFOMCで行われていた。政策変更について会合直後に市場に議長自ら説明することで、市場への理解を求めることも意識されているとみられる。
米国大統領による次期FRB議長の指名は予想通りパウエルFRB理事となった。パウエル理事であれば、イエレン議長の路線を継承するとみられ、正常化に向けたステップも維持され、政策変更のタイミングも同じようなものになると予想される。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年11月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。