【映画評】マイティ・ソー バトルロイヤル

渡 まち子

アベンジャーズの一員であるソーの前に、最強の敵“死の女神ヘラ”が現れる。美しく邪悪なヘラの圧倒的なパワーで、ソーは自慢の武器ムジョルニアを破壊され、宇宙の果てに弾き飛ばされてしまう。遠く離れた辺境の星で囚われの身となったソーは、この地を脱出するために、闘技場で盟友ハルクと対決するハメに。やがてソーは、ハルクや、弟で宿敵ロキらと即席チームを組み、ヘラに立ち向かうことになる…。

マーベルの人気ヒーローにしてアベンジャーズの一員のマイティ・ソーを主人公にしたシリーズ第3弾「マイティ・ソー バトルロイヤル」。今回は、アベンジャーズのメンバーですら持ち上げることさえできないソーのハンマー型の武器ムジョルニアをいともたやすく破壊する、桁違いのパワーを持つ死の女神ヘラが相手だ。いろいろと訳ありの最強の敵に挑むソーは、盟友ハルクや宇宙一の裏切者で弟のロキ、女戦士ヴァルキリーと即席チームの“リベンジャーズ”を結成して戦うことになるが、このヤバすぎる4人による噛み合わない会話の応酬が本作最大の魅力だ。

ケンカしながらも結局仲がいい(?)神兄弟のソーとロキの掛け合いは、兄弟漫才のよう。そもそもロキは宿敵で前作までケンカしてませんでしたっけ??とツッコミを入れるヒマさえないくらい笑わせてくれる。ハルクとソーにいたっては、筋肉同士のボケ同士で、これまた爆笑もの。ほとんど「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のノリなのだ。オスカー女優のケイト・ブランシェット演じるヘラの背景に北欧神話ならではの格調高さが垣間見えるものの、本作はあくまでもユーモアと遊び心に重きを置いている。最近シリアスに傾いていたマーベル映画を、怒涛のエンタメ路線で駆け抜けて見せたのは、ニュージーランド出身のタイカ・ワイティティ監督だ。思えば「シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア」の独特のユーモアは、映画ファンを大いに魅了したものだった。革命家コーグ役で出演もしている、この無名に近い俊英監督を起用したセンスが功を奏した快作である。
【75点】
(原題「THOR RAGNAROK」)
(アメリカ/タイカ・ワイティティ監督/クリス・ヘムズワース、トム・ヒドルストン、ケイト・ブランシェット、他)
(コミカル度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年11月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。