「まち・ひと・しごと」は地方創生の標語であり、「クールジャパン」は日本の良さを海外に売り出す標語であり、ともに政府の重点経済施策である。
地方創生は地方の疲弊に対する施策である。地方が疲弊しているは、地方経済が疲弊しているからで、地方経済が疲弊しているのは、行政の中央集権の結果なのではなくて、経済が東京等の巨大都市圏へ集中しているからである。経済が巨大都市圏へ集中しているという意味は、企業活動の意思決定の中枢が巨大都市圏へ集中しているということである。
企業の店舗や生産拠点は全国に散らばっており、雇用が全国に展開していても、店舗政策や生産計画や人事採用戦略は、本社機構によって、中央集権的に統一的になされている。そこには、地方経済の視点はあり得ないどころか、もはや、日本経済という視点すらない。企業の立地が日本でも、グローバル経済のなかで、企業の店舗政策や生産計画や人事採用戦略を決めなくてはならないからである。
止めることのできない経済のグローバル化のなかで、日本経済は、グローバル経済の受動的な一要素になってはならない。そうなれば、グローバル経済に従属することとなり、生産も雇用も、結果的には、消費までも、主導権を失い、日本経済の主体性を喪失しかねないからである。
経済の主体性を確保するとは、他者の付加価値創出へ受動的に参与することではなくて、自分自身によって、能動的に独自の付加価値を創出することでなくてはならない。ところで、日本政府は、日本経済の主体ではない。主体はあくまでも、日本産業であり、要は、日本企業であるが、むしろ、グローバル化による企業自体の無国籍化を考えれば、日本経済の主体は、日本に居住する「ひと」である。「ひと」は、日本人である必要もなく、日本に居住し、日本で働き、日本で消費し、日本で納税する「ひと」であれば、国籍すら問題ではない。
結局、日本経済の固有の付加価値とは、日本の国土の上で、日本の「ひと」が主体となって、日本の「ひと」の「しごと」によって、生み出されるものでなくてはならないのだ。その日本固有の付加価値を、今どきの英語では、「クール」な日本という。これが本当の「クールジャパン」である。
日本は、グローバル経済において「クール」でなければならない。それと同様に、地方は、独自の付加創造を行うことで、日本経済に対する関係で「クール」でなければならない。地方を「クール」にすること、それが地方創生である。
森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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