ある経営コンサルタントは嘗て運営されていたサイト「日経Bizアカデミー」で、「コンサルティングファームに所属する経営コンサルタントと、クライアント企業に所属する優秀な社員。(中略)よく訓練されたコンサルタントは、クライアント企業の社員よりもずっと早く、しかもポイントを押さえた戦略を立案することができます。(中略)驚くほど早く戦略を立案できる背景には“仮説思考”という方法論が役立っています」と言われています。
当見解に対して私見を申し上げるならば、先ず経営に限らず何事にもそうですが、良い仮説を立てられる人か否かは、その道にある意味のめり込んでいる人か否かに拠ると思います。常日頃から興味関心を強く持っているが故に、時に直感が働いたり色々な気付きを得たりして、良い仮説立案に繋がって行くわけです(参考:2017年10月20日北尾吉孝日記『閃きを得る』)。
私が思うに、様々な矛盾を内包する複雑霊妙な此の世において、所謂コンサルティングファームの人に有り勝ちな分類や抽出、ある種のこじつけの如き類が、実社会には全くと言って良い程当て嵌まらず役立たないことが如何に多いかは、認識しておかねばなりません。例えば北海道拓殖銀行(1997年11月経営破綻)より始まった一連の破綻劇で、当時潰れた会社はコンサルティングファームの人を結構雇っていたわけですが、結果論から述べれば彼らの戦略は役に立たなかったということです。
私は、仮説と検証から結果を生んで行く人とは、日々どうやって収益を上げるかと既成概念に捉われず必死になって考えて、御客様の反応を常に分析しているような人だと思っています。例えば8年半程前に上梓した拙著『北尾吉孝の経営道場』(企業家ネットワーク)でも御紹介した通り、セブンイレブン創設者の鈴木敏文さんは「欧米人はアイスクリームをよく食べるのに、日本では余り売られていない」という事実に着目され、直ぐに仮説と検証を行いました。
「アイスクリームは日本では売れない」と決めつけず、「売れないのは売り方が悪いからだ」と仮説を立て、アイスクリームの種類を以前より豊富にしたり、アイスクリーム用の大きな売り場を確保する等の検証を繰り返したのです。その結果、セブンイレブンではアイスクリームが爆発的に売れました。鈴木敏文という御方は、人間の心理を考えた細かな物の見方から仮説を立て、正確なデータによって検証して行くという姿勢を何時も徹底されてきた人で、あれ程までにそれを貫く人は稀有な存在だと思っています。
冒頭の引用は4年程前のものですが、今やブロックチェーンやAIあるいはビッグデータやIoT等々革新的な技術が、様々な産業で実用化されるに至っています。例えばビッグデータという観点から言うと、そこにある種のヒントを得ようとコンサルティングファームの類に依頼しても、良い結果が出て来るケースは殆ど無いでしょう。そこにピッと来るのは、命懸けで事業をどうするかと寝ても覚めても考えている経営者、及び一部の「優秀な社員」の方だと思います。ビッグデータをどう集め、どういう視点で分析を加えて行くかが大切だと思います。
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