保育園が相対する課題は多様化、複雑化しています。
発達障害児の早期発見と適切な対応。貧困家庭の増加。外国籍の子ども達と親とのコミュニケーション。児童虐待対応などなど。
保育園は保育(養護と教育)を行うとともに、子どもと親が抱える課題を共に解決していくことを通じて、子どもを取り囲む環境の改善に作用していく機関となることが求められています。
一言で言うと、
「保育園のセーフティネット化」
「保育園が課題解決機能を持つ」
ということです。
そこで僕が注目するのが「保育ソーシャルワーク」です。
保育SWとは、保育園を始めとした保育の場で、ソーシャルワークを行なっていくことです。
そして保育ソーシャルワークを行う人を、保育ソーシャルワーカーと呼びます。
保育ソーシャルワーカー
保育ソーシャルワークの実践は、全国の一部の意識の高い園で行われています。しかし、保育ソーシャルワークを行うことで補助金が出るわけでもなく、保育ソーシャルワーカーを専任で置ける補助があるわけでもないので、それらの仕事は一般的にはまだまだ周辺的なものとして位置付けられています。
周辺的であるがゆえに、現場の保育園園長や保育士達とすれば、「本来業務ではない」という意識を持ちがちで、それがゆえに疲弊していきがちです。
保育ソーシャルワークをきちんと保育所機能の中に位置付け、そのための財政的裏付けをつくり、保育ソーシャルワーカーという職業がきちんと位置付けられていくことが求められています。
日本保育ソーシャルワーク学会に初参加して
そんな風に思っていたところで、大阪で行われた日本保育ソーシャルワーク学会に初めて参加してきました。学会は4年くらい前に立ち上がり、初級保育ソーシャルワーカー等の民間資格も発行されているそうです。
そういった実績もおありなので、現場でのヒントがあるかと参加しました。
以下、分かったこと。
- 日本ソーシャルワーク学会の中心的な考えは、一般の保育士がソーシャルワークを行うことを想定されている。
- そのモデル事例は大阪の社会福祉法人立の保育園にのみ置かれているスマイルサポーター制度
- 一方、保育ソーシャルワーカーを置いて、現場の保育士は信頼関係構築とインテークくらいまでをして、外部資源との連携等は保育ソーシャルワーカーがやった方が良いのでは、という考えの人もいるよう
- この「保育士をSWに派」と「SWを保育園に派」の考え方なら、僕自身は後者。ただ、保育士はSWマインドを学び、適切な信頼関係構築やヒアリングまではしていけるよう、キャパシティビルディングしていかないといけないと、と思う
- また、「SWを保育園に」ということなら、そこには補助がつかないと広がらない。逆に補助がつけば、スクールソーシャルワーカー(SSW)のように全国に広げることができ、そうした職業を生み出すことができる
- とはいえSSWにも課題は多々あるので、制度化の際はSSW業界で起きている失敗を参考にしながら、先回りして制度設計していかないといけないだろう
- また、学会だったからなのか、圧倒的に事例の話が少なく、概念論が多く、そこは現場で「具体的にどうやるのか」を求めていた自分としては少し残念だった。
- ただ、それはむしろ僕たちが事例をつくって、それを集積して形にして、アカデミックな学会等にシェアしていけば良いのかな、とも思う。
というような感じでした。
いずれにせよ、先人たちの研究も参考に、僕たち実務家はまず現場でケースに対応していって、社内に専任の保育SWを置いて、全園を巻き込んだソーシャルワーク体制をつくって、さらにそれを研修プログラム化していって人材を育て、並行してそれを全国小規模保育協議会などを通じて外部にも開いて社会と共有していく、ということをできたら良いな、と感じたわけです。
保育園を、親子にとって最も身近なセーフティネットに。
これからも理論を学び、かつ実践を続けていきたいと思います。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2017年11月13日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。