行政事業レビューで「取りまとめ」って何をするの

秋のレビューも16日で三日目。今日は「観光インバウンド」の議論に参加した。普段は評価者として発言しているだけだが、今日は「取りまとめ」を担当した。取りまとめ担当はレビューでの議論についてポイントを整理したうえで、対象事業の担当部局に改善点などを示す役割を担う。しかも、それを議論に最後に話さなければならない。このために、議論中もパソコンを開いて取り文案づくりをする結構大変な仕事である。

「観光インバウンド」では以下に転記したように取りまとめた。お読みいただければ多岐にわたり真剣に議論したことが伝わると思う。なお、文中に出てくるDMOは地域に置かれた観光事業のかじ取り役、JNTOは日本政府観光局である。


訪日観光振興はわが国経済に大きな効果が期待でき観光庁事業は推進すべきであるが、外国人のニーズに沿わなければ大きな成果は生まれない。ニーズに基づいて事業を見直すことを大前提として、以下を取りまとめとする。

「観光地域ブランド確立事業」、「広域観光周遊ルート形成促進事業」及び「地域資源を活用した観光地域魅力創造事業」は本年度で終了し、3事業は「広域周遊観光促進のための新たな観光地域支援事業」へ統合される。このため、3事業について事業開始から現在までの事業効果を分析・評価して、統合の効果・改善の効果が最大限得られるように新事業に反映させる必要がある。こうした評価により、当該事業がないときに比べ事業を行うことでどれくらいの効果があったか、成功例と失敗例にはどこに違いがあったのかがわかる。それによって、成功した支援事業の手法を他に広めることもできるようになる。

団体旅行から個人旅行への変化も失敗の一因かもしれないが、サイトの英文法の間違い、スマホで閲覧できない、観光資源の英語説明がないなどの問題が旅行客の満足感に大きな影響を与えているかもしれない。来訪する観光客の立場に立って問題を分析し、それを解決するように新しい事業を展開すべきである。

「広域周遊観光促進のための新たな観光地域支援事業」については、従来のルート設定型の周遊コースを支援するのではなく、地域の観光資源を磨き上げ、魅力ある観光資源を中心として、旅行者の目的に応じた誘客戦略に移行していくべきである。

また事業実施に当たっては、政策全体及び個々の支援事業の効果を適切に評価するため、目標設定時、中間評価時、結果評価時における具体的な基準、つまり評価指標(KPI)を設定し、基準に満たない場合には事業の見直しなども検討する必要がある。現在用意されている評価指標は事業を評価するものになっていない。事業開始前に評価指標をどのように設定すべきか検討し、また指標の取得方法も用意しておく必要がある。

観光庁は、実施主体であるDMO等の自主的な運営を尊重しつつも、本事業において期待される効果を適切に発揮することができように、訪日客のニーズに応える取組を優先順位を付けて行っている先進的なDMOのみが補助を受けられるような基準を策定すべきである。

「訪日プロモーション事業」について、支援先の個別事業の実施に当たっては、JNTOが有している海外ネットワーク等を活用して、JNTOとDMOが密接に連携し海外訪日客のニーズを把握し分析を実施するが、それには「なぜ日本に関心がないのか」も含めて行うなど戦略的に取り組んでいくべきである。JNTOや観光庁が把握したニーズは新事業を含め関係者に共有する必要があり、プロモーションに活かす仕組みを作るべきである。

プロモーションを行う際も、JNTOとの効果的な連携の下、インターネットやビッグデータなど活用等により我が国の魅力発信を、訪日を考える外国人のニーズに合わせて行うことで、具体的な成果につながるプロモーションを行うべきである。