【映画評】ローガン・ラッキー

渡 まち子

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仕事も家族も失った炭鉱夫ジミーは、一発逆転を目論み、シャーロット・モーター・スピードウェイでまもなく開催される全米最大のモーターカーイベントNASCARのレース中に金庫から大金を盗み出すという前代未聞の強奪計画を企てる。だが、足が不自由なジミーと、戦争で片腕を失った弟クライド、そして美容師でカーマニアの妹メリーという、不運続きのローガン一家だけでは何とも頼りない。そこで伝説の爆破犯ジョー・バングに協力を仰ぐことに。服役中のジョーを一時的に脱獄させ、コトが終わったら刑務所に戻すという奇想天外な作戦は順調に進むかに思えたが、予想外の事態に直面することになる…。

監督引退宣言をしていたスティーヴン・ソダーバーグの復帰第1作となる犯罪コメディー「ローガン・ラッキー」。ツキに見放されたローガン家の面々が悪運を跳ね返すため、大胆な大金強奪計画に挑む姿を描く。複数のメンバーで完全犯罪を目論むストーリーは、ソダーバーグの代表作「オーシャンズ」シリーズによく似ている。「オーシャンズ」がゴージャスでスタイリッシュでド派手なのに対し、本作はユルくてアナログ、垢ぬけない印象だ。だが、これが、肩の力がうまい具合に抜けていて、なかなか面白い。ローガン家はもちろん、爆発のプロのジョーとそのおバカすぎる弟たちは何ともマヌケで不器用、でも愛すべきキャラクターたちだ。不測の事態やとぼけたミスでハラハラさせ、それでも巧妙に進む計画を見ていると、いつのまにか“呪われたローガン”を応援してしまう。

危なっかしいのに実は緻密な犯罪計画は、資金や最先端の武器の代わりに、知恵と度胸と愛嬌で勝負だ。チャニング・テイタム、アダム・ドライバーなど俳優陣が皆、適役だが、何と言っても爆発犯を怪演するダニエル・クレイグが、クールなジェームズ・ボンドとは真逆の魅力を見せて最高だ。物語のキーとなるのが劇中に効果的に使われる名曲「カントリー・ロード」。その曲は“カントリー・ロード、私がいるべき場所、故郷に連れて行っておくれ”と歌う。ソダーバーグがいるべき“ふるさと”は、やっぱり映画だ。おかえりなさいと迎えたい。
【80点】
(原題「LOGAN LUCKY」)
(アメリカ/スティーヴン・ソダーバーグ監督/チャニング・テイタム、アダム・ドライヴァー、ダニエル・クレイグ、他)
(爽快度:★★★★☆)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2017年11月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。