こんにちは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。
月曜日と言えばドラマ「民衆の敵」の放映日ですが、今回は入札を巡る汚職がテーマとして取り上げられていました。
といっても、かなり多くの方はあのドラマのシーンだけ見ても「???」だったと思いますので、せっかくなので今日は入札制度について取り上げたいと思います(ドラマを見てない人にもわかるように書きますよー)。
「民衆の敵」では、本来は2億円で事業者が落札するはずの工事案件を、2億5千万円で懇意の事業者に落札させて、5千万円を市長秘書がリベートとして受け取るというシーンが描かれました。
(公共事業のイメージ)
もちろん、このお金の原資はすべて税金であって、市民は本来払う必要のない5千万円を公共工事に支出され、それが市長秘書のポケットに入ったのですから、まごうことなき不正・汚職事件です。
なぜこんなことが可能かというと、おそらくこのドラマにおける当該の入札工事は「総合評価(落札)方式」を取っているものと思われますからです。
こうした入札制度については、それはもうこれだけで分厚い本が何冊も書けるくらいフクザツなのですが…入札制度には主に
●一般競争入札
●総合評価方式
●特命随意契約
などの仕組みがあります。
一般競争入札がもっともわかりやすく、スタンダードとされる形式で、公共工事を受注したい事業者が金額を書いた札を入れて、一番安い事業者が落札!というものです。
この制度では競争原理が働くことで、費用を安く抑えることができますね。
ただし、この形式では非常に安価で落札しておきながら途中で工事を放棄する不届き者・売名行為者や、あるいは「安かろう・悪かろう」の事業者を排除できないなどの欠点がつきまといます。
よって競争性を保ちつつ、一方で「質」を確保するために、各自治体は落札に最低制限価格を設けたり(ある一定の金額以下の入札は無効とする)、入札事業者に実績や事業規模で制限をかけたりと工夫をこらしています。
2点目の総合評価方式は、「質の確保」により重きを置いたもので、入札金額だけではなく、事業者の実績やその提案内容を加味して、専門機関等が文字通り「総合的に」判断して落札者を選定します。
この「総合的に」というところが曲者で、もちろん有識者や専門家による選定が入るものの、そこに恣意的な判断が入り込む可能性は否定できません。
今回のドラマでは、まさにここで市長(の秘書?)が意思決定権者として裁量を発揮して、自分の懇意とする事業者を選定するシーンが描かれています。
最後の特命随意契約はさらに徹底していて、「この工事は特定の事業者にしかできません!」と割り切って、特命で事業者を指名して決定します。
質を担保して確実に事業が遂行できる、入札にかかる事務手続きを省略できるなどのメリットがある反面、この場合はさらに行政の恣意的判断が入り込んでいる可能性を排除できないことになります。
なお東京都では、この特命随意契約の割合が非常に高いことが、かねてから何度も問題視されているところです。
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結論を申し上げると、どの制度にしても残念ながら完璧なものはなく、何らかの欠点が生じます。
ドラマの中でもトレンディエンジェルの斉藤さん演じる議員が、「一般的な入札汚職の例」として説明したものは、一般競争入札制度によるものでした。
他者の入札金額を事前に懇意の事業者にリークし、意図的に落札させるという古典的な手口ですね。
かといって総合評価方式や特命随意契約でも、見えないところで不正が行われる可能性があり…。
「入札制度改革」とは不正を防ぎながら、公共事業の効率的かつ円滑な実施を目指すための長い闘いの歴史です。
これまでも国や多くの自治体で様々な方法が試されてきましたが、望ましいとされる統一規格のようなものは未だにありません。
こうした文脈の中に、小池知事が都で行った入札制度改革もあるわけですが、長くなるのでこれについてはまた改めてしっかりと取り上げたいと思います。
もちろん制度が完璧ではない以上、人間による不断の監視が必要であり、その役割の一翼を担っているのが議員です。
ドラマで描かれたように、有権者からの情報提供で不正が発覚することも実際にあります。
ぜひ皆さまにも、色々なことをきっかけにこうした制度に興味関心を持っていただければ幸いです。
それでは、また明日。
編集部より:この記事は東京都議会議員、おときた駿氏のブログ2017年11月20日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおときた駿ブログをご覧ください。