この発言を看過してはいけない。自民党の山東昭子参議院議員(元参院副議長)が党役員連絡会で、「子供を4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」と発言したというのだ。
自民の山東氏「4人以上産んだ女性、厚労省で表彰を」(朝日新聞デジタル)
我々、市民はこの発言の意味を問いたださなければならない。自民党の関心事は、結局のところ「産めよ増やせよ」ということなのか。国民を産む機械くらいにしか思っていないのか。子供を授かることのできない夫婦の苦しみを理解しているのか。そもそも、結婚・出産・育児というライフイベントのあり方が変化していることをわかっているのか。本人に問いただしたい。野党も、メディアも彼女の発言の真意に迫るべきだ。
本人は朝日新聞の取材に対し
「女性活躍社会で仕事をしている人が評価されるようになって、逆に主婦が評価されていないという声もあるので、どうだろうかと発言した」
とコメントしている。
この発言だけを聞くと、評価できる点がないわけではない。「主婦」というものに光を当てている点においてである。家事労働も大事な仕事である。主婦も多様だが、仮に働かない主婦がいたとして、それは本人にやる気がないわけではなく、家庭の事情や、居住地の雇用の状況によっても変化するからだ。
もっとも、この「産めよ増やせよ」「産んだ人を評価する」という世界観は、いかがなものか。「4人以上産んだ女性を表彰」というが、4人産み、育てることを何不自由なく行うことができる国をつくることができるのか。
我が家も保育園に入れるかどうかが、今、そこにある問題である。少子化に歯止めをと自民党やその周辺の人はいつまで叫ぶのだろう。少子化は自民党が長きにわたり与党であったこの国において、ずっと叫ばれてきたことであり、誰もその責任をとっていない。もう少子化ありきの社会設計というのもあるのではないか。この点は、最新作でも触れたので、ぜひご一読頂きたい。
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4人産んだら表彰など見世物的な行為は主婦の苦労を何も労わない。無神経な発言だと言わざるを得ない。昭和的世界観を強弁し護持しようとしているのだ。
このように、何か俗耳に馴染むスローガン、意識高い系の決意表明レベルの我が国には心底、絶望する。少子化対策なるものが、虚構でしかないことが露見している。根底のところで、国民不在、国民丸投げの政治を行っていることは明らかである。不満と不信が鬱積しているのだ。
山東議員も今頃、怒りと反発の直撃をうけて顔面蒼白だろう。野党とメディアは山東発言を問いただし、糾弾し、弾劾するのだ。山東議員には我が国の現状を虚心に直視し、自身の発言を真摯に省み、敬虔な反省をもって頂きたい。進撃せよ!
私の主張に共感する善良な市民たちよ、権力者たちの暴走を監視しよう。闘いの烽火をあげよう。
ウチの娘も怒っているんだぞ。
編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2017年11月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。