排除発言の是非:中曽根さんや宮沢さんに遠慮いただいた先人がいる

早川 忠孝

中曽根、宮沢両元首相(官邸サイトより:編集部)

三権の長経験者がおられるとどうしても若い人の活躍の場を奪ってしまうだろうから、若い人を中心に新党を起ち上げる時は、「三権の長経験者にはご遠慮いただきたい」ぐらいのことを新党設立に奔走している中堅の人が口走ったからといって特に批判するまでのことはない。

確かに怒られるだろうが、重すぎる人が小さな舟に乗り込んでくると舟が傾いたり、後ろが沈んで前が浮き上がったりしてずいぶん不安定になるものだ。

もっと大きな船に移るまでしばらくご遠慮いただきたい、とか、順調に船が動き出してからご乗船いただきたいとか、色々言い方はあっただろうが、「三権の長経験者はご遠慮いただきたい」という発言が非人情とか、間違いだということにはならない。

体重の重い人は、自分が小さな舟に乗り込むとどうなるかということを慮って、ご自分から小さな舟に乗り込むことを辞退された方がいい。

この大物を排除するのか、ケシカラン、などと息巻くのはどう見ても筋違いである。
若い方々の熱い想いに思いを致さなかったのが、むしろ悪い。

細野氏には、野田さんの政治生命を奪う、などという考えはなかったはずである。
小池さんにもなかった。

菅さんについては、もうそろそろ政治の世界から足を洗われたら如何ですか、くらいの気持ちはあったかも知れないが、野田さんについては無所属で立候補されても当選されるはずだ、ぐらいの目算は立てていたはずである。

自民党にも三権の長経験者にご遠慮いただいた実績がある。
どんな言葉で言ったのか分からないが、趣旨は明らかに「ご遠慮いただきたい」ということである。

中曽根大勲位に、ご遠慮いただきたいという趣旨を伝えたのは、今をときめく安倍総理である。宮沢さんは、さっさと自ら降りられたが、中曽根大勲位は随分向かっ腹を立てられたようだ。しかし、結局は受け容れて政界からの引退を決められた。

細野氏には当時の安倍総理ほどの覚悟はなかった、ということだろう。
細野氏には、もっと修行される必要がありそうだ。

本当に先輩にはご遠慮いただくのがいい、と思ったのだったら、最後までその線で一貫されるのがいい。

ちなみに、中曽根大勲位や宮沢元総理にご遠慮いただくよう指示を発したのは、小泉純一郎元総理である。小泉さんは、小池さんよりももっと激しいことをやっている。

排除発言そのものがそもそも間違っている、などということはない。
念のため。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2017年11月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。