地方公共団体では住民の健康増進施策の重要性が高まっている。住民の高齢化が進むとともに医療・介護など福祉経費が増加の一途をたどっているからである。健康施策の重要性を訴えるため「健康」と「都市」を組み合わせた宣言を行う事例が増えている。
「健康都市」という表現を用いているのは「健康都市連合日本支部」で、北海道網走市、宮城県涌谷町、愛媛県八幡浜市など38都市が参加している。WHOの呼びかけのもと健康増進施策に関する経験と知識について互いに学び、都市として発展させていくのが目的である。
長野県松本市は「健康寿命延伸都市・松本」を創造するため、「人」「生活」「地域」「環境」「経済」「教育・文化」の6領域で、人と社会の健康づくりを目指した総合的なまちづくりを展開しようとしている。また松本市は「世界健康首都会議」を主催し、第7回が先月実施された。個人が自身に関する医療情報を収集・保存し活用するパーソナルヘルスレコード(Personal Health Records)について議論が行われたという。
福岡県福岡市では4月に「福岡市健康先進都市戦略」を策定した。客観的な根拠に基づいて健康増進施策を展開する、デジタル時代の医療サービスを実現する、ケア・テック・ベンチャーの拠点となるといった内容が含まれている。福岡市を訪問しお話を伺った限りでは、まだ本格的な実行段階には至っていないようだが、今後、遠隔医療が本格化したり、ベンチャー企業が生まれたりする可能性がある。
厚生労働省は遠隔医療を本格的に診療報酬制度に取り入れる方向で動いている。医療ビッグデータを用いて医療費の地域格差を分析する事業も推進している。中央でのこのような動きと「健康都市」を目指す地方公共団体の取り組みがうまく組み合わされていくことを期待する。また、これらの政策・施策にはAI・IoTなどの新技術の活用が不可欠であり、新技術の立証ができるように「国家戦略特区」を活用する必要もあるだろう。