サイボウズ式「意思決定」

井上 貴至
このエントリーは、連載です。

第1話 真剣と覚悟の意味

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サイボウズ(株)代表取締役社長の青野慶久氏の
チームのことだけ、考えた。』これは、本当にお勧め!

経験、学問、対話・・・
考えて、考え抜いて行動しているから、とても参考になります。

第2話は、「多様性」を重んじた「組織の意思決定」のお話。

●グループウェアあるところにサイボウズあり。
サイボウズあるところにチームワークあり。

世界で1番使われるグループウェア・メーカーになる」というミッションを掲げ、(成長でも、長期雇用でもなく)「多様性」を組織のあり方として重んじることにしたサイボウズ。

では、組織に多様性をもたらしながら、かつ秩序を守り、かつ成果を上げていくには、メンバーにどんな「あり方」をお願いしていかなければならないのだろうか。(p86)

サイボウズの試行錯誤が、とても参考になります。

▲ 誠実 ⇒ 道徳的なニュアンスが含まれるが、道徳的な正しさは定義が難しい。
▲ 正直 ⇒ プライバシー情報とインサイダー情報は話せない。
◎ 公明正大=「公」に「明」らかになったとき、「正」しいと「大」きな声で言えること

多様性がある組織では、「公明正大」でなければ(簡単に嘘をついてしまうようでは)信頼関係は生まれません。サイボウズでは、「公明正大」であることを、社長自ら徹底しています。

◆次に大切なことが、建設的な議論。

多様な人間が集まれば、多様な意見があって当然だ。多様な意見を上手に引き出しながら、建設的に議論する組織を創るには、何が必要だろうか。(P98)

サイボウズの試行錯誤は、続きます。

人が多様化すれば、解釈も多様化する。意見が噛み合わない状況はむしろ増えるだろう。・・・事実』と『解釈』を区別して扱える会社にしよう。

実際に起こったことが事実で、それを見て思ったことが解釈。たいていの場合、事実は大したことはない。解釈を付け加えることで、人は感情的になってしまうという。

『事実』と『解釈』の区別から更に踏み込んで、「現実」(不具合が多い状態)、「原因」(不具合を出したから)、「理想」(不具合が少ない状態)、「課題」(不具合を減らす)という共通のフレームワークを設定。

その上で、「原因」(cause of  action)と「課題」(next  action)は、「行動」だと定義。行動に着目することで、外部の変化にとらわれず、自分たちの行動の見直しが進む。行動」ではない現象は議論の対象から外すことができる

たとえば、不景気になって売上が下がったとする。この原因を議論するとき、「不景気になったから」とはならない。「原因」となる自分たちの「行動」は何だったかを探求する。

すると、「不景気になるのを予測できなかったから」とか、「不景気に対して施策を打てなかったから」とか、自分たちの行動に目がいくようになる。すると具体的な「課題」を設定できる。(P109)

◆そして、意思決定のあり方。

理想の表現が上手になり、議論が噛み合うようになってきたら、次に「意思決定」をしなければならない。どの理想に対し、どのような課題を実行するのか。それを誰かが決めなければならない。決まれば、実行に移れる。(P127)

この点でも、サイボウズの試行錯誤は面白い。

よくビジネス書には「優秀な社長は部下に権限を委譲する」と書いてある。私はその点、非常に優秀だった。何を開発するかは開発本部に決めてもらい、どう販売するかは営業本部に決めてもらった。

しかし、問題は発生した。開発本部が開発した新製品に対し、営業本部が「売りたくない」と言い出した。「開発本部は顧客のことをわかってない。勝手に作りやがって。こんな製品は売れない」と営業メンバーは販売活動を拒否した。(P128)

業務は組織をまたがって実行される。組織をまたがって影響を与える課題については、その上位にいる人間が責任をもって意思決定しなければならないのだ。

・・・すると、面白いことが起きた。私を説得するために、他の本部の協力を得るようになった。・・・起案する精度が上がった。・・・私が悪者のラストボスになった結果、メンバーが団結して突破するように変化したのだ。

私が本部をまたがったすべての意思決定をするようになると、以前より意志決定に時間がかかるようになった。しかし、意思決定をした後、実行に移すのがスムーズになった。各本部で事前に議論が進んでいるからだ。無駄な対立も減った。私が決めればスムーズに動く組織になった。これが組織における意思決定のあり方なのだと理解した。

◆最後に、意思決定の基本

では、意思決定の基本は何か。私はそれを2つの要素だと考えている。「起案」と「承認」だ。誰が何を起案し、それを誰が承認するのか。組織がややこしくなるのは、これが決まっていなかったり、守られていなかったりするからだ。(P131)

起案:問題を発見し、次の理想と課題を設定する企画を立てること。
承認:理想と課題(next action)を決めること。

承認者は、与えられた権限の範囲において承認できる。たとえば、社長が承認するものは、全社に影響を与えるものだけだ。本部レベルの組織構成をどう作るか、各本部長を誰にするか、製品の名前や価格を決めることなどだ。

社長はその範囲を超えて意思決定してはいけない。各本部の中での組織構成や人材の配置については、私に起案も承認もする権限はない。・・・決めるのは社長ではなくて本部長だ。社長であっても一線を越えてはいけない。それが役割分担だ。

意思決定のキーマンは起案者と承認者の2人だけである。多人数で承認するプロセスだとしても、本当に重要なキーマンは3、4人であろう。それ以外の人は意思決定に関わる権限はない。起案も承認もしない人に訴えても変化は起きない。・・・起案者と承認者に対して質問責任を果たし、意見することを意識するとよいだろう。

多様性あるベンチャー企業の意思決定が、その対極と捉えられがちな役所の意思決定と共通するところが少なくないのは、とても興味深かったです。一方で、アウトプットに違いがある(省庁(部局)横断的な本質的な取組が少ない)、起案の熱意に差があると考えられるのは、なぜなのでしょうか??

とても勉強になる本です!

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真剣と覚悟の意味
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編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2017年12月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。