なぜ金融の専門家は不動産投資を理解できないのか?

金融商品での運用と不動産投資を比較し、不動産は取引コストが高いから投資対象として金融資産に劣ると思いこんでいる人がいます。

確かに、不動産の売買にかかるコストは金融資産よりは大きくなります。仲介で購入する場合は手数料が3%。さらに、登記費用等の諸費用もかかってきます。しかしコストだけを比較して、投資の優劣を決めるのは必ずしも正しくありません。

不動産投資のメリットは「歪み」を享受できることです。情報が完全ではなく、売買が相対で行われるため、市場実勢価格よりも割安な物件が出てきます。「インナーサークル」に入ってそんな未公開情報を丹念に探していけば、超過収益が得られるような物件に出会うことができるのです。

しかし、大きな金額の物件になると誰でも購入できるわけではありません。現金で購入できるくらいの資産を保有しているか、「お金を借りる力」を持っていることが必須になります。

100万円の自己資金を持っていても、借り入れできる信用力がない人は100万円の自己資金までしか投資できません。ところがお金を借りる信用力があれば、人によっては年収の10倍以上の借り入れを起こすことができるのです。その資金を限られた人しかアクセスできない投資案件に振り向けることができます。

つまり、まとまった金額を用意できる人は、その調達能力を不動産に振り向けることによって、情報の歪みからプラスのリターンを得ることができるのです。ただし、物件の吟味には手間と時間を惜しむべきではありません。

金融資産は同じ投資信託を買えば、誰でも同じリターンが平等に与えられます。ところが不動産になると、人によって借入できる金額や金利、さらには不動産仲介手数料まで変わってくることもあり、個別性が大きくなるのです。

不動産は自分に有利な環境を作り出せる人にとっては、活用しない手はないということです。

ここまでの説明でおわかりのように金融資産と不動産は、資産運用のアプローチ方法がまったく異なります。

金融資産で大切なのは、とにかくコストです。銘柄選択や投資タイミングを考えず低コストのインデックスファンドを組み合わせるのがベストです。ところが、不動産はロケーションと借り入れ戦略の2つが成功のカギになります。

だから、金融資産のプロが不動産のプロとは限りません。2つの資産についてバランス良くアドバイスができる人は、残念ながら日本にはまだほとんどいないのです。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所、株式会社資産デザイン・ソリューションズは、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また、投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年12月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。