米追加利上げは確定的か

米労働省が8日に発表した11月の米雇用統計(速報値、季節調整済み)は、景気動向を敏感に映す非農業雇用者数が前月比22万8千人増となった。これは事前の市場予想を上回った。

失業率は4.1%と前月比横ばいと予想通り。ただしこの失業率の水準はFRBが完全雇用とみる水準よりも低い。

インフレ率の動向を占ううえで注目される平均時給は前年同月比2.5%増と、前月の2.4%増から小幅に伸びが加速したものの、賃金上昇が強まらない状況が続いている。

8日の米国市場では、平均時給の伸び鈍化で米債が買われる場面もあったが、非農業雇用者数の予想以上の増加を素直に景気の拡大基調と捉えて、株が買われ、米債は小幅ながら下落した。8日のダウ平均は117ドル高となり最高値を更新した。ドル円も113円台半ばまで上昇しており、11日の東京時間では113円台後半に上昇し、114円を伺うような動きとなっている。

米議会上下両院は7日に、8日が期限となっていた連邦予算について22日までのつなぎ予算を可決した。トランプ大統領が署名し成立した。ひとまず政府機関の閉鎖を巡る懸念が後退したことも、米国市場でのリスクオンのような動きの背景にあった。ただし、今回はそれほど政府機関の閉鎖を巡る懸念が強まっていたわけではない。

さらに英国の欧州連合(EU)離脱交渉を巡り、英国のメイ首相とユンケル欧州委員長が8日に離脱条件について大筋合意したことも、目先の懸念を払拭させた。メイ首相は、EU離脱後にアイルランドとの国境に「ハードボーダー」(厳格な国境管理)は導入されず、ベルファスト合意(1998年)と呼ばれる英国とアイルランドの和平合意の内容は維持されると述べた。これを受けて8日の欧州株式市場はロンドン株式市場を含めて上昇した(ただし、デービス英離脱担当相が8日の合意を英国が必ずしも順守しない可能性を示唆している)。

このように8日にはいくつかの懸念材料が後退したことで、リスクオンの動きを強めた。外為市場では円が売られ、米国やドイツ、そして英国の国債が売られ、欧米の株式市場は上昇したことからも、それが伺える。そして今後は欧米の中銀の金融政策の行方も注目材料となる。

11日の週は欧米中銀の金融政策を決める会合が相次いで開かれる。最大の注目は12日から13日にかけて開催されるFOMCか。米雇用統計もしっかりしていたことで、予定通り追加利上げが決定されよう。来年2月の退任が決まっているイエレン議長の会見内容にも注意したい。

13日、14日にはイングランド銀行のMPCが開催される。11月のMPCで10年ぶりの利上げを決定したが、追加利上げにはかなり慎重のようで今回は現状維持と予想される。しかし、あらためて追加利上げの可能性を示唆する可能性もありうるか。金融政策を決定する際の賛否の行方についても注意したい。

14日にはECB理事会が開催される。すでに2018年1月以降、月間の資産買入額を月600億ユーロから300億ユーロに縮小することを決定しているが、今後の正常化に向けた道筋を明らかにしてくるのかにも注目したい。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年12月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。