グリーンスパン元FRB議長は6日の米テレビ番組で仮想通貨ビットコインについて、独立戦争時の「大陸紙幣」を例に、元々無価値なものでも、人々が転売可能だと信じれば新たに価値を持ち交換が始まると解説した(日経新聞電子版)。
仮想通貨ビットコインは日本時間の12月11日午前8時より、米国のシカゴ・オプション取引所(CBOE)でビットコイン先物取引がスタートした。18日にはシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)もビットコイン先物を上場する予定となっている。
ビットコインについては、12日の日経新聞一面でも取りあげられており、10~11月は世界全体の取引の4割を日本円が占めているという記事が出ていた。個人の大手投機家なども動いているようではあるが、比較的若い世代が投機目的で利用しているようである。
このように特に日本での注目度が高いが、欧米の中央銀行関係者などからもビットコインに対するコメントも出ており、グリーンスパン元FRB議長もたぶん質問に答える格好で、「大陸紙幣」を例に解説したものと思われる。ここで注目したかったのは、この「大陸紙幣」である。
大陸紙幣について「お札と切手の博物館」のサイトに解説があった。それによると、
「西洋では、当初、民間銀行がお札を発行していましたが、アメリカ大陸では、1690年から植民地政府がお札を発行するようになり、アメリカ独立戦争(1775年~1783年)が始まると、13植民地が結集した大陸会議が「大陸紙幣」を発行します」
とあった。
アメリカがイギリスの植民地だったころは当然ながら、独自の貨幣はなく、イギリスやスペインの貨幣を使用していた。アメリカがイギリスに対して独立戦争を始めたときには、膨大な軍費をまかなうため紙幣を発行せざるをえなくなり、その結果、発行されたのが「Continental (大陸紙幣)」と呼ばれた紙幣であった。
「お札と切手の博物館」のサイトによると、
「大陸紙幣は、名刺ほどの大きさで、ぼろ布を原料に雲母などをすき込んだ紙に、凸版印刷が施されています。・・・裏面の葉の模様は、ベンジャミン・フランクリンが発明した偽造防止法で、自然の葉脈の複雑さを利用したものです。」
一応、紙幣の様相は整えてあったようではあり、独立戦争時の事実上唯一の通貨になったものの多発され、戦争が終わるころにはその価値は紙切れ同然となった。全く値打ちがないことを「1コンチネンタル(大陸紙幣)ほどの値打ちもない(not worth a continental)」と表現されたとも言われているほどである。
グリーンスパン元FRB議長は、ビットコインも大陸紙幣と同様の結末を迎えるのではないかと予想しての今回の発言であったかと思われる。しかし、大陸紙幣は植民地政府が発行したものであり、ビットコインは民間が発行したものという大きな違いもある。ただし、いずれにしても紙幣はそれに対する信任が失われると無価値となりうる。それには乱発も大きな要因になりうることも示している。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年12月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。