トランプ大統領は、なぜこのタイミングでエルサレムを首都認定したのか?

トランプ大統領が、驚くべき行動に出た。エルサレムをイスラエルの首都としたのだ。

すべての国々はイスラエル大使館をテルアビブに置いている。もちろん、アメリカ大使館もテルアビブにあった。ところが、その大使館をエルサレムに移転する準備を進めるという。

ユダヤ教とイスラム教、キリスト教、いずれの宗教にとってもエルサレムは聖地である。それゆえエルサレムを巡って、長年、争いが繰り返されてきた。このため、国連をはじめ各国は、エルサレムをイスラエルの「首都」と認めてこなかったのだ。

それを、なぜトランプ大統領は、わざわざ覆(くつがえ)したのか。中東諸国のなかでヨルダン、サウジアラビア、エジプトなどは、これまで親米だった。だが、これらの国々も反米になるのは必至だろう。

ヨルダンのアブドラ国王、エジプトのシシ大統領、そしてパレスチナ自治政府のアッバス議長などまでもが、中東の平和を脅かすと警告している。そのパレスチナでは、早速、抗議デモが起き、イスラエル軍との衝突も起こっている。

アメリカの国内事情を見てみよう。まず、トランプ大統領の娘であるイヴァンカの夫、クシュナー大統領上級顧問はユダヤ教徒だ。イヴァンカも改宗している。そして、トランプを支持する白人至上主義者たちも賛成だろう。だが、これで国際社会は大混乱だ。

そのうえ、ロシアによるアメリカ大統領選挙の介入疑惑、さらにトランプ陣営との癒着、いわゆる「ロシアゲート」捜査が進んでいる。クシュナー大統領上級顧問が、フリン前大統領補佐官に、ロシア側との接触を指示したとされているのだ。

エルサレムの首都認定は、国民の目をそらすためではないか。一方、北朝鮮の船が、続々と日本海側に打ち上げられている。北朝鮮の食糧事情が悪くなっているため、どんなに天候が悪くても、彼らは漁に出されているという。このように、北朝鮮情勢が緊迫するなか、常識があったらエルサレムの首都認定などしないだろう。

このエルサレムの問題は、中東諸国はもちろん、イギリス、フランスなどヨーロッパの国々も強く反対している。日本の国民のほとんども、トランプ大統領は間違っている、と思っている。だが、それにもかかわらず、日本政府はそのことを言えない。

おそらく、安倍首相は極めて困惑しているのだろう。だが、それでもトランプ大統領に「ノー」と言えない日本政府は、やはり問題だ、と僕は思うのだ。


編集部より:このブログは「田原総一朗 公式ブログ」2017年12月14日の記事を転載させていただきました。転載を快諾いただいた田原氏、田原事務所に心より感謝いたします。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「田原総一朗 公式ブログ」をご覧ください。