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Guillaume Paumier/flickr(編集部)
楽天が携帯キャリアへの参入を表明した。適時開示によると、総務省が今年度中に比較審査で割り当てる予定の1.7GHz帯と3.4GHz帯の割り当てを受けようということらしい。業界には懐疑的な見方が多く、楽天の株価は下がったが、私はチャンスはあると思う。その最大の理由は、日本では通信に適した帯域の電波が余っているからだ。
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しかし他にも多くの帯域があいている。まずアナログテレビの「跡地」であるVHF帯では、205~222MHzはNTTドコモがNOTTVで失敗して返還して真っ白だ。その左の公共業務(移動)に割り当てられた帯域(170~205MHz)も、ほとんど使われていない。
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VHF帯は電波の到達距離が大きい代わりに波長が長いので、アップリンクには大きなアンテナが必要で、携帯端末には適していない。このため総務省は「携帯マルチメディア放送」に使おうとして失敗したが、上り下りが非対称な動画配信に使うことも可能だ。携帯端末で受信するには工夫が必要だが、NOTTVのようなガラケー型ではなく、インターネット配信で使えばいい。
最大の帯域があいているのはUHF帯だ。次の図のように、東京スカイツリーのエリアだけでも、テレビ局の放送に影響を与えないで32ch(192MHz)もあけられる。これは現在のLTEの帯域の合計より大きい。
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しかし無線技術は飛躍的に進歩している。携帯電話に免許を割り当てるより、免許不要帯にして無線インターネットに使う手もある。これは2.4GHz帯では世界的に試みられたが、周波数が高すぎてエリアが狭く、うまく行かなかった。この点はUHF帯のほうが適している。
電波官僚がオークションをいやがるのは彼らの裁量が減るからだが、このような用途区分は彼らの裁量でやるしかない。世界的にもUHF帯は通信に再配分することが常識なので、日本の非効率な配分は見直すべきだ。
総務省は「業界から要望がないので改革する必要はない」というが、それはUHF帯がふさがっているように見せてきたからだ。700MHz帯では、テレビ業界がふさがっているといった770~806MHzがあいていた。VHF帯は公表ベースでもあいている。
日本の電波業界の最大の問題はオークションをするかどうかではなく、それが必要な新規参入業者がいるかどうかだ。この点で、楽天が手を上げたことは朗報である。今は新規参入企業には、千載一遇のチャンスだと思う。こうした問題についても12月19日のシンポジウムで考えたい。