日銀の黒田総裁は12月7日のきさらぎ会での講演で、日銀のイールドカーブ・コントロールについて説明をしていた。
「かつてのような国債買入れ額を固定する方式では、経済・物価動向や国債市場の状況等に応じて金利の押し下げ度合いに過不足が生じ、結果的に、日本銀行が望ましいと考えるイールドカーブを実現することができない可能性がありました」
日銀の金融政策がどのようにして経済や物価に影響を与えて行くのか。それは日銀の金融調節によって行われる。政策金利の短期金利を上げ下げすることで、長期金利にも影響を与え、市場を経由して経済物価動向に影響を与えようとしている。しかし、政策金利がゼロ%となってしまうと、資産買入の量を目標にするなり、政策金利をマイナスとするといった選択となる。
日銀は買い入れる資産の量を大胆に増やす政策を取った。しかし、量にも限界はある。このため取った政策がマイナス金利政策であり、長期金利そのものをコントロールしてしまおうとするイールドカーブ・コントロールであった。
本来の長期金利は市場で形成されるものであり、コントロールは難しいものとみられていた。それに対して黒田総裁は「わが国のイールドカーブは、この1年間、金融市場調節方針と整合的な形で、円滑に形成されています」と成果を強調している。
それでは適切なイールドカーブとは何か。総裁は「それぞれの年限に対応する予想物価上昇率や自然利子率の状況を分析したうえで、全体として、金融緩和の度合いが最適となるイールドカーブの形状を探し出していくことが必要となります」としている。また「適切なイールドカーブの形成にあたっては、貸出・社債金利への波及、経済への影響、金融仲介機能への影響などを踏まえて判断するということです」とも述べている。
日銀のイールドカーブ・コントロールは、歴史的にみても過去に例のない金融政策と言える。そのため「金融緩和の度合いが最適となるイールドカーブの形状」とか「適切なイールドカーブの形成」が本当に可能であるのか。適切なイールドカーブ形成を市場に委ねるのではなく、中央銀行が本当に操作することが可能なのか。
景気拡大は続くものの、物価は低位安定していることで、イールドカーブ・コントロールはしやすい面がある。しかし、この安定しているファンダメンタルズが変化し、国債の需給バランスが崩れるような場面が訪れた際にどのように対処が可能なのか。いずれイールドカーブ・コントロール政策が試される場面が出てくる可能性もあろう。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年12月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。