クリスマスが近いこともあり、温かいネタを探していた。そしてホットなネタを思い出した。ちょうど1年間に(THE虎舞竜っぽく)、紹介して少々話題になった記事がある。それは「デコ巻きずし」というもの。「巻きずし」は、郷土料理として親しまれている。海苔に酢飯を広げて具材を乗せて巻いたものを「巻きずし」という。
「デコ巻きずし」の記事を書こうと思って、昨年、取材にご協力いただいた若生久美子さんにコンタクトをとったところ、大変な活躍をされているようだ。画像のように読売テレビ「もんくもん」では料理指導をし、読売新聞(2017.8.3朝刊)にも紹介記事が掲載されている。7段1/2サイズの記事で「結構な大きさだな」と思いながら読ませていただいた。
「世の中に埋もれている優れた本を発掘する」ことをミッションに、アゴラで書籍を紹介するようになってから約2年が経過した。ベストセラーになった本もあり、Amazonカテゴリー1位、重版はあたり前になってきたが、アゴラが良い機会だったといわれると嬉しいもの。若生さんもそのようにいってくれるアゴラ読者の1人である。
ボーダーレスな「デコ巻きずし」の世界
「巻きずし」には、いくつかの種類があり、太さによって「細巻」「中巻」「太巻」などに分類される。家庭料理として定番の「手巻きずし」があったり、お寿司屋さんの、「軍艦巻き」も「巻きずし」に含まれる。有名なものとしては、千葉県九十九里などを中心とし千葉県全域で作られる郷土料理、「房総巻き」「祭りずし」がある。
「巻きずし」は、金太郎飴のようにどこを切っても同じ絵柄が出てくるのが特徴。親子で楽しめる家庭料理の一つで、「つくること」「見せること」を兼ね備えた、コミュニケーション料理ともいえる。「日本デコずし協会」という業界団体も存在する。レシピも豊富にあり、親子、外国人を対象にした料理教室は人気が高いそうだ。
若生さんが、「デコ巻きずし」と出合ったのは3年前だった。折り紙が得意だった工作好きの血がさわいだ。「日本デコずし協会」のイベントに参加し認定資格の「デコ巻きずしマイスター」を取得。「はち巻子」を命名し関西を中心に活動のはばをひろげる。活動するなかで驚いたのが「子供や孫が喜ぶ」「日本文化を学べる」という外国人の評判だった。
海外でのニーズについても紹介しておきたい。日本の文化を体験したい外国人、日本が好きな外国人、寿司が好きな外国人などのコミュニケーションに役立っている。現地での「ホームパーティー」や「ホームスティ」に差し入れとして持参したり、「デコ巻きずし」の調理を通じることで、より日本文化に対する関心と理解が深まるようだ。
これまでも、台湾、シンガポール、イギリス、スウェーデンなどで教室をひらいているが、これらの声を聞いて日本の食文化を伝えることに役立っていると実感する。海外で開催した教室が好評で、海外向けのレシピ本も計画しているそうだ。若生さんは、親子が包丁をもち包丁をいれる瞬間のわくわくする表情を見るのが楽しみだという。
「実は、子供たちよりも、親御さんのほうが熱心になる傾向にあります。普段は仕事でなかなか時間が取りにくいと思いますが、たまには、『デコ巻きずし』を通じて、子供とじっくり向き合う時間もいいのではないかと思います。『デコ巻きずし』を作って、周囲や家族の反応が変わったといわれる方が多いですね。」(若生さん)
「なにしろ切る時のわくわく感がたまらないようです。家族なら親子で楽しめます。友達が遊びに来たら披露したいといっている親御さんもいます。教室ならまわりとの出来栄えを競いあいます。断面のデザイン性を競ってインスタなどにUPする方も多いですね。こうなると『寿司』というよりは『作品』に近い印象です。」(同)
クリスマスは「デコ巻きずし」で家族団らん
昭和のよき時代、食を通じて家族が「団らん」したあの温かい光景が、「デコ巻きずし」で再現できるかも知れない。「団らん」には楽しく語り合うことの意味がある。「家族団らん」とは家族で集まって楽しく語り過ごすこと。クリスマス、お正月に、いままでとは一味変わった「デコ巻きずしパーティ」はいかがだろうか。
子供は想像力が養われて、苦手な野菜も楽しくいただくことができる。そして、食材の大切さを学ぶことができる。料理が苦手な方でも簡単につくれて、家族のコミュニケーションにも効くのなら、やらない理由は見当たらない。楽しいクリスマスをお過ごしください。
参考書籍
『親子で楽しむかわいいデコ巻きずし』(マガジンランド)
尾藤克之
コラムニスト