高校時代の数学の先生の口癖は、「数学の答案は、出来ないヤツにも理解できるように書きなさい」「出来ないヤツが、なるほど〜こうやって解くんだ。と、すっかり理解できる答案を」というものでした。
「採点者だから、わかってくれるはずだ」という甘えを戒め、解法のプロセスを丁寧に書いていくことの重要性を説いた教えでした。
この考え方は、数学の答案のみならず、司法試験の論文答案、弁護士が作成する準備書面、はたまた家電量販店の店員さんの説明等、多くの分野であてはまるものです。
司法試験の論文答案や弁護士の準備書面には、一般人が理解できないテクニカルタームが入ってくるのは当然です。
すべて素人が理解できる内容にしていたら分量が多くなりすぎますから。
しかし、司法試験の論文答案を見ていると、「この二つの文章、どうしてつながるのだろう?」という疑問を抱くことがたくさんあります。
理由が書かれていなかったり、突然、論点が飛躍したり。
弁護士の書いた準備書面は、さすがに受験生の答案ほど突飛なものはありませんが、法廷で「これはどういう意味ですか?」と尋ねなければならないケースが多々あります。
「裁判官も弁護士も同じ法曹なのだから、察してくれよ」という甘えがあるのかもしれません。
私が後輩弁護士にアドバイスすることは、「裁判官は何も知らないと思って書くべきだ。判例や学説の重要部分を準備書面で引用すれば、わざわざ調べる手間が省ける。理由も箇条書きにするとわかりやすい。判決にいくケースでは、争点と判断というふうに判決書にそのまま引用できるようなマトメを書こう」、「法律相談では、極力テクニカルタームを使わない。使った場合は解説を忘れない。重要な部分は表現を変えて繰り返す」ということです。
いささか極端な言い方ですが、子供にでも理解できる説明ができて、子供にも理解できる文章を書くことが重要だと考えています。すべてにおいて「子供にも理解できる」ができないのは、先述のとおりです(冗長で分量が多くなりすぎます)。
家電量販店の店員さんにも、とても分かりやすく説明してくれる人もいれば、テクニカルタームばかり使って何を言っているかさっぱりわからない人もいます。
書籍でも、「難解な文章が高尚だ」と考えている人が若干いるようですが、難解な文書を読むと「中身のなさを難解さでごまかしているんじゃないか?」と、最近は考えるようになりました(少し意地悪かもしれません)。
分かりやすく説明する訓練をするには、小さい子供たちの「どうして?」に丁寧に答える習慣を身に付けるのが一番です。
子供たちは容赦なく(大人にとっても)難しいことを「どうして?」と訊いてきます。
わからなければ一緒に考えましょう。
大人が同じ目線になると、子供はその大人に対して大きな親近感と信頼を抱くというのが心理学者アドラーの教えです。
このように、子育ては男性ビジネスパーソンの能力を高めてくれます。
経営者のみなさん、研修のつもりで男性の育休を推進してみてはいかがでしょう?
育休明けには、驚くほど説明能力が伸びているかもしれませんよ。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2017年12月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。