12月15日に発表された12月の日銀短観は、大企業製造業の業況判断指数(DI)がプラス25となり、前回9月調査のプラス22から3ポイント改善した。2006年12月のプラス25以来11年ぶりの高水準となり、5四半期(1年3か月)連続の改善となった。2017年度の設備投資計画(ソフトウェア・研究開発を含む設備投資額、除く土地投資額)は大企業・全産業が前年度比7.4%増となっていた。
大企業・製造業の販売価格判断DIはプラス1と、前回のゼロから1ポイント上昇となった。プラスとなるのは2008年9月のプラス11以来9年ぶりだそうである。それでも物価の上昇圧力は弱く、原油価格の上昇などでどうにか日本の消費者物価指数(除く生鮮)は前年比でプラス0.8%となっている。
日銀短観から景気動向をみると、景気は回復基調にあることは疑いのない事実である。ただし、これは欧米などの海外の景気回復が大きく寄与している。つまりリーマン・ショックや欧州の信用不安といった世界的な経済金融危機が収束した結果として、世界的に景気が回復したといえよう。
世界的な経済金融危機に対して、特に金融市場の不安を後退させるために、日米欧の中央銀行による大胆な金融緩和策が講じられた。世界的な経済金融危機の後退には、これが寄与したことも確かである。しかし、その後景気が回復し、米国の株価指数が過去最高値を更新するなどしており、これを見る限り、危機対応としての中央銀行による過剰な緩和策の必要性はなくなりつつある。
このため米国のFRBは正常化路線を進め、今年も3回目の利上げを行ってきた。イングランド銀行も今年11月に10年ぶりの利上げを決定した。ECBも慎重にQEの縮小を進めようとしている。これら対して日銀はステルステーパリングは進めつつあるものの、物価目標に縛られて方向転換そのものはかなり困難となっている。
中央銀行の金融政策の方向転換は特に金融市場に大きな影響を与えかねない。金融引き締めと捉えられると株価が下落する懸念もある。だからといって異次元緩和を続ける必要もないはずである。マイナス金利政策は金融機関に対して負の影響を与えるなどしており、むしろマイナス金利政策をやめたほうが株価にプラスになる可能性もある。実態経済に即した金融政策に修正しないと、今後、柔軟な金融政策を取ることが難しくなる懸念もある。そろそろこのあたりを考慮すべきタイミングに来ているのではなかろうかと思う。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2017年12月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。