毎年年始に掲げた目標を、年末にどれだけ達成できたか、チェックするようにしています。
以下、備忘録的に、そしてステークホルダーの方々への説明も兼ねて、今年の目標の達成度合いを、振り返ります。
【事業】
■【100%達成】2月に「障害児保育園ヘレン経堂」と「一時保育室カムパネルラ」を世田谷区経堂に開園
日本で最も医ケア児が多い自治体とされる世田谷区で、障害児保育園を開園できました。
また、一緒に一時保育も開園したのですが、実質的には保育園に入れないパートやフリーランスの方の受け皿にもなっています。
一時保育はそういう意味で非常に大事で、同時に補助的には赤字を前提にした額しか出ていません。幼児教育無償化に使うお金があったら、一時保育も含めた保育サービスインフラに投下しなくてはいけない、ということを身を持って理解できました。
さらに一時保育は、「気になる家庭」を発見できる社会的装置としても機能していて、そこからソーシャルワークに繋いでいくようなことができると思っているので、来年はやっていきたいです。
■【100%達成】企業主導型保育の仕組みを使った「おうち保育園かしわぎ」を4月に仙台で開園
2016年に始まった、内閣府の企業主導型保育。自治体を中抜きできるこの仕組みを体感してみた感想は、「つくりやすい」です。
現在の認可制は自治体が公募し、それに応募しないと保育園がつくれないのですが、自治体のやる気も足りないし、将来余るのを心配して過少見積もりになるため、供給を伸ばしにくいわけです。
しかし企業主導型は自治体とは関係なく、内閣府の委託先の団体に応募し、外形基準を満たして入ればほぼOKなので、数は非常に増やしやすい。
企業主導型という「実験」によって、供給における指定制の優位は証明されたので、今後は認可制そのものの改革に歩を進めないといけないでしょう。
■【100%達成】シチズンシップ保育園「みんなのみらいをつくる保育園」を江東区東雲で4月にオープン
オランダの教育を参考に、「指示命令しない保育園」をオープン。
これまでの保育・幼児教育では、保育士が「先生」として、子どもに対してプログラムを提供し、その中で当然のように指示・命令をしてきました。指示・命令が保育に「埋め込まれている」わけです。
一方、指示・命令への最適化によって、指示命令がないと動けない、自分で考えられない子どもたちを量産することになります。
指示・命令ではなく、質問とファシリテーションによって、自ら考え、行動する子ども達になるために伴走する。そんな保育のあり方を目指した「シチズンシップ保育園」を立ち上げました。
立ち上げて一番の驚き。それは、子ども達が自ら考え、発言し、行動するようになったことです。一番の苦労は、保育士たち側に。これまでの指示命令が当然の保育のやり方を全て捨てないと、ファシリテーション型保育には移行できない。保育士自らが、「自ら考える人」でないと、「自ら考える」子どもたちを育てることができない、ということ。
将来的には、このシチズンシップ保育を「型」にして、多くの保育園に実践してもらえるようにしたいと思います。
■【100%達成】子どもの貧困解決に関するコレクティブ・インパクトプロジェクトを4月に開始する
低所得の子ども達の家に、食品を届けつつ、地域の社会資源に繋げていくためのソーシャルワークを行う「こども宅食」。
この「こども宅食」を、企業・NPO・行政とともにコレクティブ・インパクト方式で開始しました。
当初150世帯の枠でしたが、申し込みは450世帯からくる、という人気ぶりで、慌てて目標ふるさと納税額を引き上げざるを得ませんでした。
来年は、150世帯から450世帯に広げていきつつ、ソーシャルワークの土台をしっかり作っていきたいと思います。
■【100%達成】日本初の「全ての子ども達のための保育複合施設」を日本で初めて渋谷区で10月に立ち上げる
認可保育所・障害児保育園・病児保育室・小児科が組み合わさった、夢の複合施設「おやこ基地シブヤ」を立ち上げました。
フローレンスとしては初めて更地から3階建てのビルを建てたのですが、お金も労力もかかり、スタッフには非常に苦労を強いてしまい、経営者としてはとても反省しています。
しかし、できた施設は素晴らしく、本当にみんな頑張ってくれたな、と。
病児保育は渋谷区初で、連日満員になるし、障害児保育園と認可保育所は、お互い混じり合って保育を行い、インクルーシブな環境をちょっとずつ創り上げています。それを医療がしっかりバックアップしています。
ちなみに、小児科は僕が理事を務める医療法人社団ペルルが運営しているのですが、小児科経営は初の経験で、非常に勉強になりました。
お医者さん=お金持ち=成り立たせるのは、と無意識に思っていたのですが、全くそんなことなく、安易な思い込みを反省しました。小児科は診療報酬も低く、薬もあまり出さないため、高齢者医療に比べるとかなりハンデがあるのだ、ということを痛いほど味わいました。
しかし、医療と児童福祉がつながることで、これまで福祉が手を差し伸べられなかった家庭にもリーチできる、そんな可能性も感じています。
【政策提言】
■【100%達成】休眠預金活用を透明で実効性の高いものにするために、民間で議論し、提言していくためのプラットフォームをつくる。
「休眠預金未来構想プラットフォーム」を立ち上げ、多くの方々から意見を頂き、それを審議会で発言して、制度設計に生かしました。
来年は指定活用団体の指定、そして再来年には事業スタート、という流れになり、日本のソーシャルセクターは大きな変化を体験するのでは、と思います。
課題溢れる日本社会において、休眠預金財団が社会イノベーションを加速していく存在になっていくよう、後押ししていきたいと思います。
■【100%達成】「親子関係断絶防止法案」を成立させないよう尽力
DV等があった際に、主に母親が子どもを連れて逃げることを禁じようとする「親子関係断切防止法案」に、DV/ひとり親支援の立場から反対の論陣を張りました。
一部の過激推進派の人たちからSNSで罵声を浴び続け、電話攻撃や手紙での嫌がらせも多々受けましたが、法案そのものは部会でも反対意見が相次ぎ、押しとどめることができました。
しかし、推進者の馳浩議員はまだやる気だったり、推進したい三谷英弘議員が当選してしまったりしているので、来年も予断は許されない状況です。DVシェルター団体の方々らとともに、引き続き反対していきたいと思います。
▲【30%達成】特区において「医ケア児が普通に学校に行けるように、訪問看護の居宅縛りを外す」ことを実現
現状、医ケア児はスクールバスに乗れなかったり、親が教室に同伴していなければいけない状態です。
しかし、いつもの訪問看護師さんがついていってあげれば、そうした問題を解決できますが、訪問看護には「居宅縛り」が存在していて、学校にはいけない。
これを外そう、ということで国家戦略特区に持って行ったのですが、医療保険の壁は厚く、なかなか法改正できません。
しかし、厚労省が妥協案で、モデル研究事業でお金を出し、訪問看護師が特別支援学校に行って親を解放する、という取り組みを今年度から始めることができました。
その研究班のあおぞら診療所の前田医師曰く「親がいるのといないのとでは、子ども達の目の輝きが全然違う。親がいないと、遊ぼうよ、と子どもが子どもに話しかけてきたり、活発化する。親の帯同をしなくて良くする仕組みだと思っていたが、子どもにとっても良い」と仰っていました。
来年度も、本事業が継続され、本体制度に乗るよう、尽力していきたいと思います。
×【10%達成】特別養子縁組あっせん法に関わる政省令において、縁組団体がきちんと事業継続できるような仕組みを提言し、実現してもらう
特別養子縁組あっせん法の成立によって、民間縁組団体を補助する仕組みになったと思いきや。補助額がものすごく少なく、これでは許可制で手間だけ増えて、むしろマイナスだ、という状況になりました。
このままだと日本の特別養子縁組は死ぬ
塩崎元大臣、高木美智代厚労副大臣、山本香苗議員、遠山清彦議員、木村弥生議員等、多くの方々がご尽力くださったお陰で、補助額は若干上がるかも知れない可能性が出てきたように仄聞しています。
来年は、今年の力不足を反省し、もっとしっかりとした制度になるよう、民間側からの働きかけを強めていけたら、と思っています。
【個人】
■【104%達成】これまで不定期だったブログを2日に1度以上、定期的にアップする
昨年の元旦から、駒崎ブログにおいて190記事、ヤフー個人ブログにおいては110エントリーという結果。
(駒ブログの一部をヤフー個人にアップしているので重複しています)
よって、なんとか達成できました。
来年はペースはこのままで、質を高めていけたらと考えています。
▲【30%達成】(16年が「色々とやりすぎた」年だった反省から)1年の計画に沿って動き、より「やらないこと」を明確にしていく
今年はお酒をほぼやめることができました。また、講演は無事ほとんどやめられたのですが、「こども宅食」や「マーガレットこどもクリニック」等、結局スクラッチからの立ち上げを今年もがっつりやってしまったので、多忙感いっぱいだったと思います。
来年はフローレンス内での、スクラッチからのど新規事業の立ち上げは抑え、今ある事業を固め、伸ばしていく年にして行きたいと思います。
今年は多くの方々に、本当にお世話になりました。この場を借りて、心よりお礼を申し上げたいと思います。
編集部より:この記事は、認定NPO法人フローレンス代表理事、駒崎弘樹氏のブログ 2017年12月28日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は駒崎弘樹BLOGをご覧ください。