新聞各紙の報道によれば、厚労省は、企業が精神障害者を雇用しやすくする特例措置を来年4月から設けることを決めたという。実現すれば、職場に受け入れられにくい精神障害者の雇用促進につながることが期待される。来年4月には、改正障害者雇用促進法が施行される。現在の、法定雇用率は2.0%だが、目標値は2.2%に引き上げられる。
現行の、身体障害者、知的障害者に、精神障害者の雇用義務化により、2.2%の達成は可能なのだろうか。一般的に、障害者は離職率が高いと言われる。参考までに、「平成25年度障害者雇用実態調査結果」(厚労省)によれば、平均勤続年数は、身体障害者10年、知的障害者7年9ヶ月、精神障害者4年3ヶ月とある。
障害者支援に必要なことは
「精神障害者は勤続年数が短いので特別な配慮が必要」との声があるが問題はそこではない。期間に問題があるのではなく、企業側の障害者に対する理解を高めることが必要である。理解が進まなければ「法律ができたから採用しなくてはいけない」という間違った認識しか残らない。そのような接し方で、目的が達成できるとも思えない。
先の調査によれば、障害者が離職する理由で最も多いのが「職場の雰囲気・人間関係」である。「障害」に理解があり、仲間として、戦力として必要とされることが大切なのである。この理由は、障害者も健常者もさほどかわるものではない。そして、現状を自分の目で見て感じなければ、理解を深めることはできない。
12月27日~12月28日の日程で「六日町温泉 ほてる木の芽坂」(南魚沼市小栗山)で、障害者や大学生、ボランティアなど110名が参加する障害者支援活動を開催してきた。同活動は、橋本龍太郎元首相夫人の橋本久美子さんが会長を務めている。
今回も、宿泊地として「ほてる木の芽坂」を利用したが、これは2000年以降、11回目、近年では7年連続になる。この障害者支援活動は、1981年の国際障害者年にスタートしている。今年で36年目、全国50ヶ所以上、参加者は2万人を数える。
冬のシーズン、新潟県は「雪を生かした観光」を目指している。付加価値の高いサービスが目指しており、それがホスピタリティにいきついたようだ。多くの障害者を受け入れて切り盛りするには、高いサービスレベルが求められる。内装や清潔感、料理などのハード面は重要だが、ベースにはホスピタリティの意識が必要になる。
最近は、行政や市議会、学校関係者や障害者施設、多くのメディアが注目する活動になった。定期的に開催する大衆演劇などでは地元福祉施設や特別支援学校を招待するなど、地元との関係性がつくりやすくなったといわれる。森田隆行さん(南魚沼市教育委員会指導主事)は、次のように活動の意義について語っている。
「南魚沼市の地域性もあると思います。生活の中心である、米づくりや、雪に関する産業は、他者との交流や人間関係が必要とされます。障害者が地域コミュニティのなかで確立した存在になるには、交流の質と量が必要です。南魚沼市は、互いの交流を通じて関心を高めていく土地柄なので、受け入れられやすいのかもしれません。」(森田さん)
事業活動はどうあるべきか
企業の社会貢献とはなにか。社会貢献の事実が報道されることで評価が上がることを期待する経営者がいる。しかし、このような希薄な意識で社会貢献をしても定着することは難しい。一方で、経営者が社員に企業活動の社会的意義を伝えるために社会貢献を行うケースもある。そのようなケースは社員に浸透しやすくレベルが向上しやすい。
企業における事業の最大の目的は?と聞かれれば、「利益の追求」と多くの経営者は答える。私は、「利益は企業の目的ではない」と考えている。事業における効果や手順ではなく、有効であるかの適切性、つまりは妥当性であると考えている。妥当性があれば利益が上がり、妥当性がなければ利益が下がる。この妥当性とは社会からの評価である。
事実、社員のなかで「企業の利益のために仕事をしている」と明確に答える人はどの程度いるのか。おそらく、「顧客のため」「社会のため」「家族のため」「自分のため」と答えるはずだ。「利益を追求すること」が企業の目的化となれば、社会的な批判は避けられない。それが、社会貢献団体であれば、より強い非難をあびることになるだろう。
さて、私は、障害者支援をおこなっているので、その論調でまとめとする。1972年に米国ペンシルバニア州裁判所は「PARC判決」を宣言している。これは、差別的な教育に対する是正を求めたものであり、教育のダンピングを招く危険性があることへの警告である。
内閣府の平成29年度障害者白書によれば、身体障害者392万2千人、知的障害者74万1千人、精神障害者392万4千人とされている。国民の6%が何らかの障害を有するともいわれているなか、障害者政策は私たちにとって喫緊の課題でもある。
また、表記について「障害者」を使用している。「障がい者」は使用しない。過去には、多くの障害者が権利を侵害されてきた歴史が存在する。それらの歴史を、言葉を平仮名にすることで本質をわかり難くする危険性があることから「障がい者」は使用しない。
最後に、今回、ご協力いただいた皆様に御礼申し上げたい。ライブメンバー(敬称略)、安納なお、TSUYABOO、藤巻佑次朗、宮林愛美、辻真由美、高山慎平、大槻勇斗、湯本拓也。以下、来賓についても、多くの方に列席いただいたが、勝手ながら主賓3名のみ紹介とさせていただく。また詳述については都合上割愛する。林茂男(南魚沼市長)、森田隆行(南魚沼市教育委員会指導主事)、横尾浩(南魚沼市立総合支援学校校長)。
尾藤克之
コラムニスト