データに現れた東京人のグルメ情報感度の高さ

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

私は記事を書く時に統計データを引用することが多く、主に食に関する統計データを見ています。データというのは意識調査や筆者の持論と異なる「冷静な真実」が現れているとつくづく感じます。私は主に食や果物、贈り物について様々な関連記事を書いているのですが、最近見た統計データを見ていて、興味深い結果を見つけたので取り上げてみたいと思います。

ワインデータに現れたブームと県別の嗜好性

日本には数多くのお酒があります。日本酒やビールを始めとして、ウイスキーや焼酎、そしてワインです。日本人が初めてワインを体験したのは室町時代後期とあり、その歴史は意外なほど古いことが分かります。しかし、一般の人にワインが認知され、愛飲され、オシャレな飲み物としてメディアでも取り上げられるようになったのは実はここ10年以内の極めて最近であることがデータに現れています。

下記のグラフは総務省統計局が発表したもので、お酒全体への支出が低迷しつつある中ワインが突然、平成23年(2011年)に上へ伸びたことが分かります。

画像引用元:総務省統計局「ワインへの支出 」

この時期のワインメーカーのニュースリリースを見ると「ポリフェノール増量」「有機酸を含む」とPRする商品が出ていることが分かりました。「ワインのポリフェノールは健康にいい」ということがメディアで取り上げられ、「ワインは和食とも合う」と言われるようになったのはこの頃です。

ワインが多くの日本人に愛されるようになってわずか7年間、ワインに魅了されブームを牽引しているのは一体誰なのか?その答えは「東京を始めとする関東人」であることが統計データを見ると分かります。

データ引用元:総務省統計局「ワインへの年間支出 平成26年(2014年)~28年(2016年)平均」より筆者がグラフ作成

…いかがでしょうか?このランキングを見ると、トップ10に東京、神奈川(横浜)、埼玉、千葉と関東4県が全て入っており、全国平均を大きく上回っていることが分かります。もっとも少ないのは和歌山県でその差は5倍以上にも及びます。「いやいや、関東は人口が多いから当然の結果でしょ!?」そう思われるかもしれませんが、横浜市に次ぐ人口第2位の大阪市はワースト9位で、大阪では明らかにワインの人気がないことをデータが示しています。

ランキング上位の長野市はワイン用ぶどう生産量日本一で有数のワイナリーを持っており、甲府市も国産ワインとしてのブランディングに力を入れていることから、消費量の高さには納得感があります。「関東人はワイン好き、ワインの生産地ではワインが良く飲まれ、大阪ではワインは不人気」と見て取ることができるのではないでしょうか?

高級フルーツが好きな東京人

上述の通り、ワインは7年前に健康推しのブームに乗って広まり、主に関東でよく飲まれていることが分かりました。

さて、次に見てもらいたいのはフルーツのデータです。下記のグラフは2016年度の総務省統計局の発表した家計調査データから作成したものですが、果物の消費量は東北を中心に多いことが分かります。この主要因は意外なことに「りんご」とされています。

みかんやバナナはあまり地域差はないのですが、りんごは地域で3倍以上の消費量に差がひらくフルーツで、「果物の消費量はりんごの消費量に相関性が高い」と見ている専門家もいます。フルーツはりんごが栽培される産地でよく食べられていることがデータから分かるのです。人口の多い東京は意外に20位といまいちふるいません。

しかし、自分が食べるためのフルーツではなく、贈答用となると東京は圧倒的です。贈答用フルーツの消費量は統計データが見つからなかったので、自分のお店の過去の販売データを分析して見ました。当店、肥後庵は「熊本県産」の高級フルーツギフトショップなのですが、売上の6-7割は東京都のお客さまで占められています。熊本県在住のお客さまは比較的上位に位置していますが、売上の割合についていえば東京は圧倒的な存在感があります。これは東京に本社を置く企業のお客さまから大量注文を頂いていることが主要因ですが、個人のお客さまを見ても他の都道府県の方に比べて積極的にご利用頂いているようです。「自分用のフルーツはあまり食べないけど、贈答用となると積極利用する」という東京人の行動がデータから見えてきました。

東京人はグルメ情報感度が高い

今回ご紹介したワインとフルーツのデータを見てたどり着いた推論は、東京人は情報感度が高いのではないか?ということです。

ワインが市民権を得てわずか7年という浅い歴史ですが、愛飲しているのは東京人です。また、一般フルーツはそれほど食べないのに贈答用フルーツは積極利用するのも東京人が目立ちます。これらはブームや喜ばれる贈り物に対しての情報感度の高さと見てとることができるのではないでしょうか?

東京はブームの発信地であり、それだけ物や情報がたくさんあふれているのでそうならざるをえない環境であるのは間違いないと思っていたのですが、今回ワインとフルーツのデータを見て「単なるイメージではなく、データに情報感度の高さが現れている」と感じました。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表