プログラミング教育は「官民」から「官」へ

プログラミング教育の官民コンソーシアム「未来の学びコンソーシアム」の体制が抜本的に変更されました。
事務局を民間団体から文科省が引き取り、官民コンソというより「官」コンソとなりました。
これにより、これまで停滞していた日本のプログラミング教育が強力に進められることが期待されます。
その一方で、そのように進めるためにも、これまで停滞し、混乱し、今回コンソーシアムの体制変更をすることになった行政について、経緯を明らかにする必要があると考えます。
このコンソーシアムは、2020年に必修となるプログラミング教育の環境を整備するため、閣議決定「日本再興戦略2016」に明記されたもので、2017年2月には「コンソーシアム事務局(ICT CONNECT 21) 」として文科省・総務省・経産省が設立をアナウンスし、3月に総会を開いたものです。
 
 
しかし6月末に運営協議会が1度開かれたものの、民間サイドから事務局の運営を巡る厳しい指摘が相次いだと聞きます。
その議事録も公開されず、年末に至るまで動きがありませんでした。
事務局であったICT CONNECT 21(ICON)は会費無料の任意団体で、プログラミング教育に関する実績もありませんでしたが、去る2月に3省から事務局として指名された後に社団法人化し、3省をバックに有料会員を集め、数社から出向者も送り込まれています。
事態を打開するため、5月、プログラミング教育に関し15年の実績を有するプラットフォームのNPO「CANVAS」に対し、政府からICONとともにコンソーシアムの「共同」事務局を担えないかとの相談がありました。
これで事態は好転するかに見えました。
 
 
 
 
協議が重ねられましたが、さなかの9月、ICONが協議中の事項を内容とする独自ワーキンググループを発足させると発表し、3省を含め混乱が続きました。
そしてどうやら結局ぜんぶひっくり返り、今回の「民→官」の判断になった、ことのようです。
官から見れば、せっかくICONという民の団体を立ち上げたのに困ったことでしょう。
でも、ぼくのような「民」からみても困ったことです。
民間関係者により組織されたコンソーシアム運営協議会の委員の多くも、何がどうなっているのか不明の状態だったそうです。
でも、ぼくはこの決定でよいと考えます。
今回の変更で、文科省も生涯学習局から初等中等局に移り、3省による本部員も指名され、体制が強化されるようで、結構なことです。
 
日本のプログラミング教育がこれから「官主導」で円滑かつ強力に動いてくれると期待する次第です。
ただ、民は民で血と汗を流してきました。
官が腰を上げてプログラミングを推進し始めたことは誠にありがたい。
でも、今回のコンソ騒動のため、動きを1年ほど止めてきた活動もあります。
当方の活動が阻害されることもありました。
そのあたり政府にはわきまえていただきたい。
閣議決定して進める案件です。
予算も講じられています。
民間の注目度も高いコンソーシアムです。
ここまで動きがなく、今回また仕切り直しというのは、どうなっているんでしょう。と私も産学の関係者から(ICONの理事からさえも)問われているのですが、よくわかりません。
今回の変更について、政府発表には「小学校のプログラミング教育の円滑な実施等にコンソーシアムが一層重点的に取り組み、文部科学省を中心として関係業界を巻き込んで取組を加速化することができるよう」とあるだけですが、状況と展望について政府が情報を公開する必要があると考えます。
ぼくがよく聞かれる事項は以下です。
 
・政府が事務局としてあらかじめICONを指名した経緯と理由は何か。
・今回、ICONを外し、官が引き取ることとした経緯と理由は何か。
ICONが事務局として実施した活動は何か。
・今後、コンソーシアムを民間の活動とどう連動していく考えか。
教育情報化、プログラミング教育という全国の子どもたちに深く関わる問題であり、ことは加計問題よりも重要で、関係者も多岐にわたる案件なのですが、今回の決定は「これでいいでしょ」感が漂うだけで、ホント大丈夫なのかなぁと感じます。
事態の好転に向けて対応いただければ幸いです。

 

今回の官コンソへの変更に際し、ぼくが信頼する民間のかたがたが文科省のチームに参加する模様です。
そのかたがたが力を発揮し、暗雲を取り払ってくださるよう願います。
そのためにも、これまでのことを整理し、官民の関係者が失敗を成功に転換できるよう情報を共有いただきたく存じます。

編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年12月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。