新年早々の東京株式市場は米国主体にロケットスタートとなっており、日経平均株価があっさりと23000円台に乗せて、上げ幅を拡大させてきている。この背景にあるのは、世界的な景気の回復である。リーマン・ショックやギリシャ・ショックに代表される世界的な金融経済危機が終焉し、新たなステージに入ってきたとも言えよう。
2度の世界的な金融経済危機に際して、日米欧の中央銀行は過去に例のない大規模な金融緩和策を講じてきた。米国の中央銀行であるFRBはすでに正常化に着手しているものの、それも極めて慎重に行っている。英国の中央銀行のイングランド銀行も同様であり、欧州中央銀行(ECB)も正常化に向けた動きは極めて慎重である。日銀は表面上は向きさえ変えていないものの、とりあえず追加緩和に目を向けることはなくなりつつある。
いずれにしても日米欧の積極的な金融緩和策により、大量の資金が金融市場で渦巻いており、その資金が米国の株式市場に向けられ、日本の株式市場にも入り込んでいる。もしかすると今後はコモディティと呼ばれる商品にも向けられる可能性もあり、原油価格が思わぬ上昇となる可能性もないとはいえない。
見方によればこの状況はバブルの様相に見えなくもない。しかし、特に日本をみると来年の新元号のスタートや2020年の東京でのオリンピック・パラリンピックの開催なども控え、国内景気がさらに拡大し、株価はこれから本格的に上昇トレンドを迎える可能性も十分にありうる。
あまり楽観的な見方も禁物であり、北朝鮮の地政学的リスクや中東リスク、欧州の政治動向などリスク要因にも目を配る必要はある。しかし、2007年あたりから2012年あたりにかけての世界的な危機的状況が再来する可能性は極めて低いことも確かである。
このような好環境にあって、実は景気そのものの足を引っ張りそうなのが、日銀の異次元緩和ではなかろうか。経済・物価動向に沿った金利水準を市場で形成させず、日銀が無理矢理金利を押さえ込む必然性がますます見えてこない。国民に金利を与えずその分が我々の負担ともなっており、結局、日銀の異次元緩和政策は膨大な債務を抱えた国の財政には貢献する格好となっている。この状態で本当に良いものなのか、我々がよく考える必要があろう。もし金利が動けば金融機関も資金運用がやりやすくなり、その結果収益が改善し、これが金融株の上昇要因となり、株価をさらに上昇させる要因にもなりうる。潤沢な資金を抱える企業も多く、金利の上昇は以前に比べてそれほどのマイナス要因にならない。
もしかすると今年は順調に物価が上昇してくる可能性もありうる。そうなれば、日銀は2%という物価目標に固執せずに、柔軟に政策金利、つまり長短金利の目標水準を変更させ、それにより景気や物価に好影響を与えるようにすべきではなかろうか。非常時の対策を現在のような好況時まで続けるのは極めておかしい。その分の負担がどこかに掛かることになり、それが実は我々国民に掛かっていることも認識すべきである。そろそろ物価目標の呪縛から日銀を解き放つ必要がある。今年は意外にそのチャンスなのではなかろうか。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年1月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。