米国ではネット通販の拡大(とりわけアマゾンの肥大化)によってショッピングモールなどのリアル店舗が苦境に陥っています。日本でも、家電量販店をはじめ、リアル店舗がネット通販によって甚大な影響を受けています。品物が同じであれば、価格比較サイトで一番安い店からネットで買う方が明らかに経済的ですから。
このままネット通販が際限なく拡大し、リアル店舗はなくなってしまうのでしょうか?
誰もが指摘しているように、ネット通販の最大のネックは物流です。ヤマト運輸が値上げに踏み切ったように、今の勢いでネット通販が増加していけば配達業者が不足するのは目に見えています。全国の流通業者や新規参入業者を合わせても品物を運べなくなってしまえば、ネット通販の拡大はそこで止まってしまいます。
それを見越したアマゾンは、ドローンを利用した配達を試みたり、許可をえて不在宅内に入って配達したりと、試行錯誤していたのでしょう。
ヤマト運輸の値上げまでさほど危機感を感じていなかった日本に比べ、米国でははるかに早くから物流の壁が立ちふさがっていたのかもしれません。米国のアマゾンプライム会費が日本の会費より随分高いのも、このような壁が存在しているからかもしれません。日本でも、物流価格が高くなればプライム会費の値上げにつながるかもしれません。
もっとも、物流業者の値上げによって(超過)利潤が発生すれば、(超過)利潤がゼロになるまで新規参入者が入ってくるので、(仮に会費値上げがあるとしても)ワンクッションあることは間違いないでしょう。
国交省のお節介すぎる規制がなければ、新規参入は比較的容易です。
まず考えられるのは、タクシー業者に宅配もしくは運送を認めることです。
ライドシェアの脅威にさらされているタクシー業者にとって、荷物運送は魅力的な新規事業になるのではないでしょうか?外国人観光客相手の白タクが横行しているようなので、すでに闇ライドシェアは相当存在するのではないかと思われます。
夜間の鉄道網も上手に利用すれば物流への新規参入になると思います。終電から始発までの間、地下鉄を物品運送用として利用すれば、物流コストはかなり低下するし道路の渋滞も緩和されます。まさに、鉄道網のシェアですね。
地域の配送センターに集められた荷物を、近所の人たちが空き時間を利用して配るようにすれば、在宅高齢者の活用と収入増にもつながるでしょう。地域見回りの役割も担うことができます。
このように、余計な規制を大幅に緩和してしまえば、ネット通販は(値上げを最小限に抑えつつ)まだまだ伸びる余地があるのではないでしょうか?
規制緩和には、既得権益が猛然と反発するでしょうが…。
宅配ボックスを設置している家庭やマンションへの配達費用を低くしたり、逆に再配達料金を追加徴収すれば、宅配ボックス設置のインセンティブにもなるでしょう。国の規制に頼って安易に便乗値上げをしていると、護送船団方式で守られていたかつての銀行のように総崩れになる恐れがあります。
そういえば、最近、アマゾンの古本の配送料が一斉に値上げされています。
郵便料金以上の値上げは感心しません。店頭在庫を瞬時にネットで確認できるようにすれば、リアル古書店にとってはチャンスです。
寺院の拝観料値上げなどは、開いた口が塞がりません。横並びの便乗値上げを素直に受け止めるほど、今の消費者は甘くはないということをしっかり認識すべきです。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年1月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。