戦国時代に入った「フェイクの世界」

人は嘘を言う存在だ、といえば多くの人は少し表情を歪めながら首肯せざるを得ないだろう。これまで一度も嘘をついたことがないと胸を張って言える人はいないだろう。相手を陥れるために嘘をつく攻撃的な嘘から、相手の為につく利他的な嘘もある。いずれにしても、世界は嘘が氾濫している。そこに今日、事実を隠し、情報を操作するために嘘を発信するフェイクニュースが乱入してきた。フェイクの世界は今、戦国時代に突入してきたのだ。

▲わが家からみた新年の朝焼け風景(2018年1月、ウィーンで)

▲わが家からみた新年の朝焼け風景(2018年1月、ウィーンで)

ところで、誰が嘘を創造したのだろうか。嘘の知的所有権問題だ。
まず、人類の始祖アダムとエバまで辿ってみる。旧約聖書の「創世記」を読むと、蛇に象徴される天使は「善悪を知る木」の実を取って食べるようにアダムとエバを誘惑したが、その際、「食べても死ぬことはけっしてないでしょう。それを食べると、あなたがたの目が開け、神のように善悪を知る者となることを、神は知っておられるのです」と巧みに“嘘”をついている。私たちが知る最初の嘘は天使によって発信されたことが分かる。

それではアダムとエバはどうだろうか。エバは蛇に誘惑されて神が取って食べてならないといった実を食べた。その後、エバはアダムに蛇と同じように食べるように促した。過ちは次から次へと繁殖していく。しかし、彼らは嘘を言っていない。神から糾弾されたアダムは正直に、「あなたが与えてくれた女(エバ)が食べるように言いました」と自身の過ちを弁明し、責任を転換したが、嘘はついていない。ただし、弁明は嘘が生まれてくる温床となったことが推測できる。弁明を繰り返すことで、人は次第に嘘を言わざるを得ない状況に追い込まれていったわけだ。

イエスは2000年前、神の子、救い主として降臨したが、悪魔の頭ベルゼブルだと吹聴され、律法を破る異端者として当時のユダヤ社会から罵倒され、最終的には十字架で殺害された。その後、「イエスは人類の罪を贖うために十字架で亡くなった。イエスの十字架を仰げば救われる」という教えが生まれてきた。実証的に検証しても明らかなように、誰も救われていない。「イエス(キリスト)殺害」という人類史上最悪の犯罪を隠蔽するために出てきたフェイクニュースだ。

ただし、注意しなければならない点は、イエスを迫害したユダヤ民族、イエスの十字架救済論を主張した聖パウロも当時、自分の言動が正しいと信じていたことだ。恣意的に嘘をついたのでもなく、フェイクニュースを流したわけではない。
それでは誰がイエスを十字架に追い込み、十字架救済論を拡大していったのか。その答えは「エデンの園」で最初に嘘をついた悪魔となった天使の仕業だったわけだ(「ユダヤ民族とその『不愉快な事実』」2014年4月19日参考)。
いずれにしても、イエスは2000年前のフェイクニュースを暴露し、自分が誰で、その使命は何であったかを知らせるためにどうしても再臨せざるを得ないわけだ。

フェイクニュースの目的は、真実が明らかになることを阻止することにある。そのフェイクニュースが社会に溢れてきたということは、“不都合な事実”が明らかになる時が近いことにもなる。

人は嘘をつき、事実を隠すためにフェイクニュースを発信する。フェイクニュースは魅力的であり、説得力に富んでいる場合が多い。私たちは24時間、様々なニュースに取り囲まれた情報社会に生きているが、そこから事実を見出すことは容易な課題ではないのだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年1月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。