1月15日に日銀の支店長会議が開催された。日銀のサイトには黒田総裁の挨拶がアップされている。これを前回の昨年10月の挨拶分と比較してみたところ、昨年10月の挨拶分と今回の挨拶分の違いはわずか1か所だけとなっていた。
「物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、0%台後半となっている。」2017年10月の支店長会議挨拶
「物価面をみると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、1%程度となっている。」2018年1月の支店長会議挨拶
つまり消費者物価(除く生鮮食品)の前年比の居所だけが、ここにきての前年比での上昇を受けて「0%台後半」から「1%程度」にやや上方修正されていた。
これ以外の挨拶分には変更はない。景気に関しては昨年10月も今回も下記の通りとなっている。
「わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。先行きについては、緩やかな拡大を続けると考えられる。」
この部分は昨年7月には下記のようになっていた。景気についてはより強気の姿勢を維持した格好となった。
「わが国の景気は、緩やかな拡大に転じつつある。先行きについては、緩やかな拡大を続けると考えられる。」
最も注目すべき部分となるのは、「金融政策運営について」であろうが。その文面は下記のように全く変更されていない。もちろん金融政策そのものが現状維持となっていることで当然と言えば当然ではある。
「金融政策運営については、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続する。今後とも、経済・物価・金融情勢を踏まえ、「物価安定の目標」に向けたモメンタムを維持するため、必要な政策の調整を行う。」
この金融政策運営はこの5年近い経験則なども踏まえ、より柔軟なものに修正すべきものであることは確かである。しかし、そもそも物価目標が達成されていないこと、また外為市場などへの影響、政府との関係等々を配慮すると、現在の日銀としてはこの頑なな姿勢を維持せざるをえないのも確かである。それではこの姿勢を修正せざるを得なくなるとすれば、それは何が原因となるのか。
そのひとつの可能性としては、日銀の本来の思惑通りの物価の上昇が挙げられる。日本の消費者物価指数(除く生鮮食品)が安定的に2%を超えて推移することは、まず考えにくいものの、瞬間的に2%を超えることはありうる。
それはあくまで外部環境がそうさせるものとなり、中央銀行の金融政策によるものではないことが、むしろこれで明らかとなることも予想される。そこにあって金利が超低位に押さえつけられている。つまり我々が本来もらえるはずの金利分がもらえていない実情に対して批判的な見方が強まることも考えられる。その際に日銀が柔軟な対応を示せるのか。外為市場への影響なども考慮するとなかなか難しい選択に迫られることになる。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年1月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。