「日中関係が改善」という観測が年明けの日本で広まった。2017年末に自民党幹事長の二階俊博氏が訪中し、習近平国家主席らに歓迎されたことからの期待のようだ。
では、中国側の対日政策は実際に変わったのだろうか。
答えは明確なノーだといえる。中国側は対日政策の根底は変えないまま、外交戦術として仮初めの微笑をみせているにすぎない。日本側は警戒を怠ってはならないのだ。
中国政府が友好行事を開くタイミングとは
「中国の対日政策の軟化」や「日中関係の改善」といった日本側の観測は、自民党幹事長の二階俊博氏が公明党幹事長の井上義久氏を伴って北京を訪れたことから広まった。2017年12月24日から29日までのこの“北京詣で”で、二階氏は習近平国家主席とも会談する誉れを得て、歓待を受けた。中国共産党の中央党校にも招かれて演説をした。中国版シルクロードとされる「一帯一路」構想への日本の参加も熱烈に要請された。そうした中国側の前向きにみえる態度が、「対日政策の雪解け」という推測を日本側に生み出した。
しかしちょっと待て、である。日中関係での二階氏の動きには気をつけねばならない歴史がある。
米中関係が険悪となり、日米同盟が強化されると、自民党の二階俊博氏が北京に姿をみせる。日米中三国関係のうねりを長年、観察していると、こんなパターンがあることに気づく。
「風が吹けば桶屋が儲かる」ということわざのような、一見、奇妙な因果関係にみえるが、よく観察するときちんとした理屈が通っていることが分かる。背後にあるのは、中国側の巧みな日本懐柔戦術である。
二階氏のこれまでの北京詣でを振り返ってみよう。
2000年5月、運輸大臣だった二階氏は約5000人もの日本からの訪中団を率いて北京を訪れた。旅行業界や観光業界を動員しての訪中である。人民大会堂での式典では江沢民、胡錦涛という正副の国家主席が登場して歓迎した。明らかに中国側の主導で開かれた友好行事だった。
その頃、産経新聞中国総局長として北京に駐在していた私は、この訪中団歓迎の儀式を目前にみて、それまでの中国側の日本への冷たい態度が急変したことに驚いた。
当時、米国のクリントン政権は、中国の台湾への軍事威嚇などを理由に対中姿勢を急速に硬化させていた。クリントン政権は日本に日米共同のミサイル防衛構想を呼びかけ、同盟強化を進めていた。
多数の関係者に聞くと、中国指導部はそんな状況下で日米両国と同時に敵対関係を深めるのは不利だと判断して、日本に仮初めの微笑をみせたのだという分析で一致していた。