昨今、俳優やタレントなど有名人の不倫報道が過熱しています。このような行為の多くは、当該有名人の名誉を棄損し、プライバシーを侵害しています。
名誉棄損とは、ある人の社会的評価を低下させる行為を指します。また、社会的評価を下げなくとも、「私生活をみだりに公開する」ことはプライバシーの侵害になります。
これらは、いずれも民法709条の不法行為を構成し、加害者であるメディアには損害賠償義務が発生します。
もっとも、名誉侵害行為のうち事実を適示するものについては、それが、①公共の利害に関する事実にかかり(公共事項性)、②公益を図る目的に出でたるものであり(公益目的性)、③適示された事実が真実であることが証明された場合(真実性)、または、真実であると信ずるのに相当の理由があると認められた場合(相当性)には、不法行為とならないとされています(最高裁、昭41・6・23)。
国会議員などの公人は別として、俳優やタレントなどの「不倫報道」には、公共事項性も公益目的性もありません。ましてや、有名音楽家や有名漫画家などの不倫報道は、明らかに名誉棄損を構成しプライバシー侵害にもなります。
よく、俳優やタレントはメディアを利用して稼いでいるのだから、メディアによって叩かれるのは当然だという考えもありますが、それは誤っています。
俳優やタレントがメディアによって名前を売っても、それによってもたらされる利益のすべてを享受できるわけではありません(実際は極めて薄給と聞いています)。
彼ら、彼女らにも「名誉」や「プライバシー」は存在し、それを侵害されば最悪職を失うという大損害を受けることもあります。
俳優やタレントがメディア相手に訴訟を提起しないのは、仮に勝訴しても賠償額はたかだか知れているし、その後も芸能活動を続けるのであればメディアを敵に回すのは得策ではないと考えているからでしょう。
メディア側も、賠償金を払っても報じる方が利益が大きいと割り切っているように感じられます。
このような不条理を防止するには、米国の懲罰的損害賠償のように賠償額を驚くほど高額にするか、刑法230条の名誉棄損罪として刑事罰で処罰するしかないように思われます。
場合によっては、当該有名人を支援しているファンたちが、「心ない報道によって精神的苦痛を受けた」として集団でメディア相手に訴訟を提起するという方法もあるでしょう。
メディアにとっては、これが一番こたえるかもしれません。
ともあれ、過熱しすぎている「不倫報道」。つい目にしてしまう一般人の私たちが不快感を覚えるレベルにまで達しています。
まずは、メディアの自重を求めたいと思います。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年1月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。