パウエル議長となってもFRBは正常化路線を継続か

久保田 博幸

米議会上院は23日にFRBの次期議長にFRB理事のジェローム・パウエル氏(64歳)を充てる人事を承認した。2月3日に任期が切れるイエレン現議長の後任となる。

ジェローム・パウエル氏はワシントンD.C.出身、所属政党は共和党。ディリオン・リード&カンパニーという投資銀行で役員を務め、ジョージ・W・ブッシュ政権で財務次官補(国内金融担当)や財務次官を歴任。1997年から2005年までカーライル・グループ共同経営者となった。2012年に連邦準備制度理事会(FRB)の理事に就任、2014年6月16日に再任された(任期は2028年1月31日まで)。

パウエル氏は昨年11月の議会の公聴会で、政策金利を「さらに幾分か引き上げることを想定している」と述べ、景気過熱を防ぐためにも利上げが必要との認識を表明した。これまでのイエレン議長の正常化に向けた動きをフォローする立場にあったともみられ、イエレン議長が敷いた正常化路線を継承するとみられる。

パウエル氏はコンセンサスづくりに重点を置く性格の人物との評もあるようだが、まさにこれはFRB議長として適していると思われる。過去のFOMCでは反対票を投じたことが無いとされている。

「ミスター普通」とも称されているようだが、それでもパウエル氏は実務経験が豊富なだけに、市場では今後タカ派的なイメージを持たれる可能性もあるのではなかろうか。とはいえ今後、利上げピッチを早めたり、保有資産の圧縮スピードを過度に高めるようなことをするとも考えづらい。このあたりについてはコンセンサスを重視した動きとなるとみられ、慎重姿勢を貫こう。

また、銀行規制には反対の立場を明確にしており、このあたりはトランプ政権の考え方に近いものがある。ただし、FRBが実際に金融規制改革を行うにあたっては、金融規制担当の副議長に就任したランダル・クオールズ氏が存在しており、クオールズ氏の意向も強く反映されることも予想される。

ただし、注意すべきはFOMCのメンバーがいまだ固まっていないことである。フルメンバーとなった際にどのようなバランスとなるのか。トランプ政権の意向がどの程度反映されるのか。いずれにしても路線は大きく変わらずとも、トップが変わることは事実であり、FRBの政策に何かしらの変化が生ずる可能性もあるため注意しておきたい。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年1月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。