2017年度の貿易統計の速報値が公表された。昨年度に引き続いて、輸出が増え、輸入が減少したものの、依然として、赤字額は2兆円を超えている。これで3年連続、医薬品貿易赤字額は2兆円を超えている。小野薬品が抗PD-1抗体の国内特許を抑えていたからいいが、そうでなければ、この数字はかなり膨らんでいたと思う。小野薬品の先見性を高く評価すべきである。
そして、抗PD-1抗体に代表される免疫チェックポイント阻害剤に関するニュースがASCO(米国臨床腫瘍学会)から送られてきた。稀少がんに対する腫瘍縮小効果率についてだ。稀少がんであるかどうか、疑問に感ずるものもあるが、とりあえず全データを紹介する。
(1)ペムブロリズマブ
悪性中皮腫 20% (25名中5名)
膵臓内分泌腫瘍 6% (16名中1名)
カルチノイド 12% (25名中3名)
唾液腺腫瘍 12% (26名中3名)
精巣腫瘍 0% (12名中ゼロ)
胸腺腫瘍 24% (21名中5名)
遺伝子不安定腫瘍 約50%
(2)ニボルマブをベースとする治療
子宮頸がん 26% (19名中5名)
女性外陰がん 0% (5名中ゼロ)
肛門がん 24% (37名中9名)
卵巣がん 15% (20名中3名)
ホジキン病 87% (23名中20名)
肉腫 5% (38名中2名)
肉腫 16% (38名中6名)(イピリムマブ併用)
(3)アベルマブ
メッケル細胞がん 32% (88名中28名)
卵巣がん
(PD-L1陽性) 12%(57名中7名)
(PD-L1陰性) 6% (17名中1名)
となっている。有効率が高いことが知られているホジキン病や遺伝子不安定性がんを除いて、高いものでも32%、低いものではゼロだ。正常な精巣ではHLAが発現していないので、がんになってもがん特異抗原が提示されているとは考えにくい。したがって、効くはずがないと思うが、案の定ゼロだった。これらの数字からも、効果の期待できる患者の選別が非常に重要だ。
編集部より:この記事は、シカゴ大学医学部内科教授・外科教授、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のシカゴ便り」2018年1月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。