東京23区の大学定員抑制は適切なのか?

鈴木 馨祐

都心の大学の定位抑制の妥当性は?(写真AC:編集部)

「地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律案」という法案の審査が党内で行われています。最近若干報道もされている、東京23区内の大学の定員を抑制する法案です。

そもそも需給を規制する、供給を抑え込む法案というのは自由主義社会においては一般的には過度な政府の介入といわざるを得ません。過去このような法案は、工場等制限法、タクシー特措法など極めて限られた例しかありませんでした。

地方の大学を強化することの重要性には全く異論はありません。私が懸念しているのはその手法が果たしてこの政策目的に合致しているのかという点です。

実際、秋田の国際教養大学や、新潟の国際大学、福島の会津大学、大分の立命館アジア太平洋大学など、現状でも地方において競争力の高い大学は存在しています。私もこれらの大学のいくつかに赴き、そこの学生と意見交換もしてきましたが、首都圏からも大学生が多く進学しています。

こうした大学は決して東京の大学を押さえつけることでできてきたわけではありませんし、今後東京の競争力の高い大学を押さえつけて地方にいい大学ができるようになるのかといえば、そこには疑問を持たざるを得ません。

特に大学は高度人材の輩出拠点であり、イノベーションの中核を担う機関です。まさに日本の経済成長の成否を握る存在といっても過言ではありません。その競争力は死活的に重要です。

今回の規制によって、単純に既存の大学が守られることとなってしまえば、大学の新陳代謝、競争という観点からも本末転倒です。本来は、競争力のある大学が伸び、新規参入して、質の高くない大学が淘汰されることが必要で、そのための様々な制度整備が重要なはずです。それを一律にいい大学も悪い大学も東京にあるというだけで規制してしまうことが、果たして正しいのか。

また今回の法案では、例えば、海外のトップ大学が日本に進出しようとするケースでも、東京に進出する場合には既存の大学を買収するなどしなければ進出ができないということになってしまいます。アジアのほかの国、都市との競争を考えれば、そこまでしてわざわざ日本に進出する大学があるとは思えず、他のアジアの国々にみすみす取られてしまうことになりかねません。

こうした疑念がある以上、果たしてこの規制が適切なのか、きちんとした議論をせねばならない、ということで、異例のことではありますが、昨日私が副本部長・事務局長を務める自民党の行政改革推進本部(甘利明本部長)において審査を行ったところです。

幅広い視点からの議論がされる中で、文部科学省からは、質の低い大学の退出に備えた制度の創設を行うということ、大学への予算配分などの重点化を行い、質の低い大学を維持するような政策は転換すること、内閣府からも、海外のトップ大学などの日本や東京の国際競争力に資するものについては例外とし、そのための条文変更を行ったこと、等の提案、回答がありました。

今後の制度設計、実際の運用を引き続き注視していくことが必要ですが、この規制について、10年間の緊急避難的な時限の措置としていることや、例外規定が置かれていること等を踏まえ、本来望ましいものではないが、やむを得ないということで承認したところです。

我が国は統制経済の国ではありませんし、過剰な規制は経済の活力を必ず奪ってしまいます。政府が過剰な介入を国民生活にしないよう、規制についても予算(=税負担)についても、必要最小限度であるべきというのが私の基本的な考えですが、その観点から、最近若干「大きな政府」、介入主義に向かいつつある党内のムードに流されることなく、引き続き同志の議員とともに頑張ってまいりたいと思います。


編集部より:この記事は、自由民主党青年局長、衆議院議員の鈴木馨祐氏(神奈川7区)のブログ2018年2月2日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「政治家  鈴木けいすけの国政日々雑感」をご覧ください。