米株、調整相場で終わるのか弱気相場に突入するのか

安田 佐和子

米株が2月2日の米1月雇用統計を経て、5日までの2営業日にまさかの大幅安を迎え、調整相場入りが迫っています。特に5日はダウが一時1,597.08ドル安と下げ幅で過去最大、史上初の1,000ドル以上の下落幅を記録しました。終値では1,175.21ドルと、もちろん終値で最大の下落幅に。下落率は4.6%と、2011年8月以来で最大となりました。

この日にFRB議長として宣誓式に臨んだパウエル氏の心境は、如何なものだったのでしょうか。

ダウの構成銘柄30種が全て下落したのは、中国の景気減速懸念により同国株式市場が急落した2015年8月24日以来です。当時は、Fedが9月利上げを見送らざるを得なくなりました。

ダウをはじめS&P500、ナスダック、2月5日までの動向はご覧のような状況です。

(最高値からの下落率)
ダウ→8.5%安
S&P500→7.8%安
ナスダック→7.2%安

(年初来リターン)
ダウ→1.5%安
S&P500→0.9%安
ナスダック→0.9%高

VIX指数も当然ながら急伸し前日比115.6%上昇の37.32で引け上げ幅は過去最大でした。過去10年平均を上回って引けたのは、2016年11月4日、米大統領選の直前ですよね。その他の5日の急落をめぐる数字は、こちらをご参照下さい。

問題は、下値のメドですよね。午後3時頃から僅か15分で暴落するというフラッシュ・クラッシュ相場のごとき展開を迎えた2月5日は、ダウとS&P500、それぞれ50日移動平均線がある25,000ドル割れ、S&P500の2,700割れで下げ足を加速しましたよね。100日移動平均線や一目均衡表・雲の下限で持ち堪えたように、極めてテクニカル的且つ機械的な動きをみせたのは、アルゴリズム取引の弊害を象徴しているかのようです。

S&P500 のチャート。

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(出所:Stockcharts)

そうなると、100日移動平均線の攻防に屈したとして、次の目標は一目均衡表・雲の下限や200日移動平均線と想定されます。ダウなら23,750ドル付近、22,720ドル付近となり、さらに最高値からの20%安、弱気相場入りの攻防ラインとしては21,300ドル付近に留意したい。S&P500なら順番に2,620、2,533、2,280が意識されます。

果たして、米株はこのまま下落を続けるのでしょうか。幸い米10年債利回りは2014年4月以来の2.84%台から5日に2.71%台へ切り返しFF先物市場も年4回の利上げ確率が前日の28%から16%へ後退したので、そろそろ押し目を拾われても良いような・・。米金融当局者からは早速、足元でパウエル新FRB議長の講演予定は見当たらないものの、CNBCやFOXなどのインタビューで対応するのか注目です。今週カナダで開催予定のG7財務相・事務方会合でも。協議されることでしょう。

ホワイトハウスは、既に対応に着手しています。シャー副報道官は5日、力強いファンダメンタルズに自信を表明しました。同氏の発言通り、米経済は順調に拡大中。米1~3月期実質GDP成長率の予測値はNY地区連銀で3.22%増アトランタ地区連銀に至っては5.44%増と、異例なほどの強い水準となっています。米1月雇用統計では悪天候マジックが影響した可能性を残しつつ、平均時給の着実な伸びを確認しました。米1月ISM製造業景況指数米1月ISM非製造業景況指数など、ビジネス景況感もそろって良好。米1月消費者信頼感指数もセンチメントは高止まりしていますよね。CNBCによる市場関係者聞き取り調査Fedサーベイでも、1年以内に景気後退入りを予測する回答者の割合は2011年8月以降で過去2番目の低水準にあります。

米国債と社債スプレッドも拡大していません。米株相場は弱気相場に向かっているというより、原油安に揺れた2016年2月チャイナ・ショックが襲った2015年9月米国債格下げで震撼した2011年8月のように弱気相場入りを回避し、調整局面で踏みとどまるのではないでしょうか。

過去に米株が急落した局面を振り返ると、金融危機の真っ只中を除き成長率はプラスを維持してきました。今年のスーパーボウルはNFCのフィラデルフィア・イーグルスが初優勝を飾り、アノマリーで言えば米株上昇で年を終える期待も高まってきましたよね。「人の行く裏に道あり花の山」を実行した者が、勝利の美酒に酔える・・・かも?なんて申し上げつつ、投資はあくまで自己責任でお願い致します。

(カバー写真:Matt Thorpe/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年2月6日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。