5日の予算委員会で、9条1項、2項を残して単に自衛隊を明記する、安倍総理の9条改憲案には、多くの問題点があることを指摘した。
すると、翌日6日に質問した我が党の今井雅人議員に対して、総理は次のように答弁した。
「これは玉木委員もきのうおっしゃっていたんですが、自衛権自体をそこに書き込んでいく、しかも、自衛権の書き方について、我々が解釈を変更したところについても書き込んでいくという考えはあるんだろう、それは思います。」
これには、ちょっと驚いた。
安倍総理が、自衛隊ではなく「自衛権」の話をし始めたからだ。
「自衛権」の議論を避け、単に自衛隊の存在だけを明記する案には問題があると考えるようになったのだろうか。
正しい方向へ、議論の軌道修正が図られるのなら歓迎したい。
ただし、私は、総理が言う「我々が解釈を変更したところについて書き込んでいく」ことには反対だ。
なぜなら、あの安保法制の中身をそのまま書きこむことは、日本国憲法の平和主義や専守防衛の概念を逸脱することになると考えるからだ。
特に、存立危機事態の「新3要件」は、書きぶりが極めてあいまいで、武力行使の要件としては広すぎる。我が国にとっての攻撃がない場合でも武力行使できると読めるからだ。例えば、ホルムズ海峡でオマーンに対して攻撃があり、石油の輸入が滞ったような場合であって、我が国に対する武力攻撃が一切想定されないような場合にも、日本は武力行使できる。これはさすがに広すぎる。
今後の憲法改正議論の中で、「自衛権」の制約や発動要件を憲法上明記し、軍事的公権力の行使に明確な歯止めをかけていくことは一案として考えられるが、その場合には、安保法制で規定された「広すぎる」武力行使の要件をいったん見直すことが大前提だ。
私は、5日の予算委員会で指摘したように「自衛権」の議論なくして自衛隊だけを明記することに反対の立場だが、加えて、現行の安保法制をそのままにして、これを前提とした自衛権を書き込むことにも賛成できない。
安倍総理が、「自衛権」の議論に耳を傾けてくれたことは評価するが、それは、日本がこれまで維持してきた平和主義や専守防衛の概念に合致したものでなければならない。
「自衛権」の制約を憲法上どのように書くべきか、そもそも書く必要があるのか、これから党内および国会での議論を深めていきたい。
いずれにせよ、所信表明に対する代表質問で宣言したように、我が党は、国会での憲法論議を「正しく」リードしていきたい。
編集部より:この記事は、希望の党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2018年2月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。