文在寅氏に未来志向型“接待”の勧め

長谷川 良

どうしても頭から離れないニュースがあるものだ。最近では、韓国中央日報(日本語版)の記事だ。平昌の第23回冬季五輪大会開会式前後の“五輪外交”をテーマにした記事で、そこには韓国大統領府の接待報告が書いてあった。当方が忘れることができない部分とは「北朝鮮代表団4回、ペンス米副大統領1回、そして安倍晋三首相ゼロ」という部分だ。何のことかというと、文在寅大統領が開会式に参加するために訪韓したVIPへの接待回数だ。

▲北代表団と歓談する文在寅大統領(韓国大統領府の公式サイトから)

▲北代表団と歓談する文在寅大統領(韓国大統領府の公式サイトから)

年を取るにつれ、一般的な記憶力は減退するといわれるが、当方も記憶力は弱体化したが、逆に良くなった記憶もある。それは数字だ。一旦、数字を聞くとなかなか忘れない。中央日報の記事でも「4、1、0」という数字が頭から離れないのだ。そこで時間が経過したが、アウトプットして追い払おうと考えた。お付き合いを願う次第だ。

中央日報の記事が指摘するまでもなく、文大統領の北代表団への接待回数は飛びぬけて多い。金永南最高人民会議常任委員長、そして金正恩労働党委員長の妹、金与正党第1副部長らと昼食、夕食を共にしながら歓談している。言葉の障害がないから、対話もさぞかしスムーズに進んだろうと推測する。

中央日報の記事から少し紹介する。

<北代表団に対して>
「文在寅大統領は、韓国に2泊3日(9~11日)滞在した金与正氏と4回も会った。開会式出席(9日)、会談および昼食会(10日午前11時~午後1時46分)、女子アイスホッケー合同チーム競技の観覧(10日午後9時10分~11時10分)、三池淵管弦楽団公演観覧(11日午後7時~8時40分)を共にした」

<ペンス米副大統領に対して>
文氏はペンス氏も2泊3日(8~10日)の間に4回会ったが、会談および夕食会は8日午後6時30分~9時14分の1回だけだ。ペンス氏は9日のレセプションの時は開始5分で会場を離れている。韓国側がペンス氏と北の金永南委員長を同席させ、米朝の対話を演出しようとしたことに、ペンス氏が不快に感じたからかもしれない。
トランプ米大統領の訪韓時(昨年11月)を思い出す。韓国大統領府は、米大統領歓迎夕食会に1人の元慰安婦を招き、トランプ氏と面接させたり、竹島(韓国独島)産のエビを食事に出するなど、国賓に対してすら非礼を意に介さない面がある。

<安倍晋三首相に対して>
開会式とレセプションを除けば、文大統領と安倍首相は9日午後、1時間の会談がすべてだ。「安倍氏に対する韓国政府の高位要人の食事接待もなかった」という。安倍首相は9日午後、開会式前の文在寅大統領と五輪会場近くの竜平リゾートで首脳会談を行った。その内容は既に報じられているから省くが、韓国側と日本政府側の会談後の発表内容は少々異なっていた。力点を置く場所が違うからしようがない。ここで問題は安倍首相への接待がなかったという事実だ。

安倍首相は2015年11月、3年半ぶりに開催される日韓首脳会談のために訪韓し、朴前大統領と会談したが、朴槿恵大統領主催の昼食会はなかった(「安倍(首相)さん、パブ・モゴッソ?」2015年10月30日、「安倍(首相)さんのソウルの『昼食』」2015年11月4日参考)。安倍首相は会談後、ソウルの焼き肉店で昼食をされている。

「メシを食ったか」(パブ・モゴッソ 밥 먹었어?)は韓国人の挨拶言葉だ。一緒にメシを食べることを大切にする民族だ。家族、友人、知人との食事の時間を大切にする。その韓国の最高指導者、文大統領が平昌五輪開会式のために訪韓した安倍首相と食事の時間ももつことなく、会談で済ましたことはやはり異常だ。難題を抱えているだけに、食事を交えて話し合うといった考えはなかったのか。大統領がその気になれば、時間は作れるものだ。時間がなかったからとは言わないでほしい。

文大統領の訪日がそろそろ話題となってきた。安倍(首相)さん、文大統領が訪日したら最高の日本食で歓待してあげてほしい。それを通じて、文大統領に「未来志向の接待」とは何かを感じ取ってもらえば万々歳だ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2018年2月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。