父親が二度書類送検されていたのに…目黒5歳女児虐待死

上田 令子

目黒区の船戸結愛ちゃん5歳の痛ましい虐待死報道を改めて深く受けとめた3月5日の私の一般質問は、大きな反響となり、引き続いての虐待と虐待死根絶の取り組み、縦割り行政の問題追及を求める声が続々と届いております。中でも女性都道府県議会議員の会の仲間であり、児童養護施設勤務、里親も経験された結愛ちゃんが直前まで暮らしていた香川県の岡野朱里子香川県議から寄せられた情報は得難く、東京都福祉保健局からの報告とは若干異なることが独自調査で判明しております。おりしも世界女性デーにあたり上京された3月8日に都庁においでいただき、児童相談所を所管する福祉保健局少子社会対策部家庭支援課長と一緒に状況確認をさせていただきました。

【岡野香川県議と共有した問題点】
・父親は昨年、香川県警により2度も結愛ちゃんに対する傷害容疑で書類送検されていたことを品川児相は過小評価していなかったか?

・同上の事案により、香川県児童相談所へ平成28年12月~平成29年2月、同年3月~7月と二度一時保護されていた。

・都は、香川県が児童福祉司指導措置を解除したから警戒レベルを下げたと判断したようだが、それは加害行動を起こす父親が先に上京したからである。無職であり転居という環境変化、それに伴い長時間子どもと一緒に再同居することとなり、相当リスクは上がっているはずと品川児相は判断しなければいけなかったのではないか。

・厚労省の指導では、児童福祉司指導措置解除後の支援を求めている。かつ、他自治体間での引き継ぎの場合、ケース移管と情報提供の2パターンあり、ケース移管の方がより重要案件。今回は、ケース移管と記して都へ引き継いで香川県は分厚いファイルを1月には送っているので、より警戒すべきだったのではないか?

・香川県にいた1月は16㎏。目黒区へ引っ越してきてから僅か一か月半で4㎏も痩せていて死亡時12kg。4歳女児の平均体重は18㎏。香川県における体重測定は1月4日。転居直前のタイミングをとらえ、急ぎ4日健診に同行し、4日措置解除。香川県における最後の結愛ちゃんの現認は4日。以降電話つながらず転居先を1月23日に確認し、都側の担当部署を探し、連絡を取っていた。福祉保健局も品川児相も警視庁、警察署と具体的な情報共有をすべきであり、子の現認を警察にも依頼すべきではなかったか。

・福祉保健局の見解は、「引き継がれた援助方針が児童福祉指導も解除、措置によらない援助継続指導延長もなかった。香川県から援助を引き継いだものがなかったから品川児相の援助方針が決まってないのは通常処理通りで、決める前に事故が起こった。」というが、あまりに危機意識が低かったのではないか?

・品川児童相談所は、2月9日に家庭訪問、2月20日学校説明会という機会がありながら結愛ちゃんを確認していなかったことの見落としは甚大である。体重が激減しているわけだから会わせなかったわけだし、二度の書類送検と二度の一時保護という経緯を把握していれば、児相は警察と一緒に子どもの現認を少なくとも2月20日の時点で行うべきではなかったか。香川県は全ケース警察と連携。今回のようなケースでは、香川県の場合は一度訪問し会えない場合は、警察を呼び出し安否確認をしている。

・結愛ちゃんに2月9日と20日に会えなかった事実を、品川児童相談所は香川県側には伝えなかった。福祉保健局としては、伝える必要を感じていなかったようだが、もし連絡したら、香川県の方は警察を同行して安否確認を求めたものと思われる。

【その後明らかになった痛ましい事実】
・死に至る暴行前に「言うことを聞かなかったから」と水のシャワーかけていた。
・おむつ姿で倒れていた。
・目黒区近隣住民の証言「泣き声はほとんど毎日聞こえた。夕ご飯の時間も外で一人で遊んでいることもあり変だと思っていた。」「女の子の手足がすごく細かった。」

【上田令子の見解】
・香川県側が児童福祉司指導措置を解除していたから重篤なケースと判断しなかった理由としての後手後手となったことは説明がつかない。品川児童相談所・福祉保健局は警戒レベルを上げて迅速に対応すべきであった。

・担当課長は事件から一週間たっても書類送検のことは把握していなかったことからも、ケース移管にあたり、香川県から送られてきたファイルを精読していたのか疑問が残る。

・2度も、結愛ちゃんと会う機会を逸したことは、弁明はできない。

・児相が情報提供せず、警察との連携が図れていなかったことも大きな要因の一つ。対策会議準備をするのは結構というか、当然だが、近隣住民の証言からしても、その間の子の現認のため警察へ協力要請すべきであった。香川県にまだいたら、警察が赴いて結愛ちゃんを現認して命が救えたであろう。

警察との虐待情報全権共有を求める私の質疑に対して、都側はこれまでの取組を強調するにとどまりましたが、3月9日の記者会見でも小池百合子知事は心を痛め「児童虐待防止ということについては、一層、取り組んでいきたい事案だ」と発言していることから「東京大改革」に「虐待・虐待死ゼロ」を加えて、一足とびに警視庁との虐待情報を進めて頂きたく引き続き働きかけてまいります。

【お姐総括!】

(3月9日付都政新報1面)

地方行政と地方議会の業界紙「都政新報」にこのようなコラムが掲載されてます。

「今回のケースを見ると、子家センの連携に目立った問題は見られない」
「今回は結果として悲劇を防げなかった」

と書かれてますが、お姐からしたら

児相と子ども家庭支援センターの連携体制に本当に問題がなかったの?
問題がなかったら、結愛ちゃんは亡くならなかったのではないの?

です。業界感覚と我々一般都民の価値観との違いに愕然とします。江戸川区では、子ども家庭支援センター人材を養成、2020年児相移管に向け地元警察署へも協力要請して進めております。あれだけ児相移管をしぶってきた東京都は今後、移管を求める自治体に塩対応することもなくなりましょうが、そのために支払われた代償があまりにも多すぎ、大きすぎます。

毎度恒例の言い訳「亡くなったことは重く受け止める」で済まさず縦割り、押し付け合い、縄張り争いを今日この日からやめよ!!

結愛ちゃんの魂の安らかなることを心よりお祈り申し上げます。

☆お姐、言い訳能力だけは優れたお役所文化。問題解決力にその優れた才能を活かさせよ!☆

上田令子 プロフィール
東京都議会議員(江戸川区選出)、都議会会派「かがやけTokyo」政調会長、地域政党「自由を守る会」代表
白百合女子大学を卒業後、ナショナルライフ保険(現ING生命)入社後、以降数社を経て、起業も。2007年統一地方選挙にて江戸川区議会議員初当選。2期目江戸川区議会史上最高記録、2011年統一地方選挙東京都の候補全員の中で最多得票の1万2千票のトップ当選。2013年東京都議会議員選挙初当選。2014年11月地域政党「自由を守る会」を設立し、代表に就任。2015年3月地域政党サミット(全国地域政党連絡協議会)を設立し、副代表に就任。

上田令子の世直しプロジェクト
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地域政党サミット(全国地域政党連絡協議会)
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