米雇用統計をきっかけに金融市場の地合いが好転か、日本は注意

9日に発表された2月の米雇用統計で、非農業雇用者数は前月比31.3万人増と、20万人あたりとされた市場予想を大幅に上回った。失業率は4.1%と前月と同水準、平均時給は前年比2.6%%と伸びが鈍った。

雇用は予想以上に拡大していたが、時給の伸びが抑制されていたことで、インフレ加速懸念が後退し、FRBによる緩やかな利上げ観測が強まり、これらを米国株式市場は好感した。9日のダウ平均は440ドル高と大幅に上昇し、ナスダックは132ポイント高となりこちらは1月26日に付けた過去最高値を久しぶりに更新した。12日にダウ平均は下落したが、ナスダックはしっかり。日足チャートをみるとダウ平均はまだダブルボトムを抜けてはいないが、ナスダックは綺麗に上昇トレンドを描くかたちになりつつある。

今回の雇用統計を結果からも、3月20、21日のFOMCでの追加利上げの可能性は強まったというか、市場はほぼ確実視している。ただし、時給の伸び鈍化により年4回の利上げの可能性については幾分か後退したのではないかと思われる。

9日の米債は雇用の予想以上の伸びから米10年債利回りは一時2.91%まで上昇したが、時給の伸び鈍化もあり押し目買いも入ったことで、結局、2.89%となっていた。12日には2.87%に低下している。

米朝首脳会談の可能性も出てきたことにより、市場にとってひとつの懸念材料であった北朝鮮リスクが後退した。少なくとも軍事衝突の恐れはかなり後退したといえる。ドイツの政局不安は後退し、イタリアの政局については不透明化ながらもユーロという体制を脅かすほどのものになるとは思えない。

これらのリスクの後退により、いわゆるリスクオンの相場が復活してくる可能性があり、米株は再度高値を更新し、米10年債利回りは緩やかながら上昇し3%を目指すことになり、原油先物も再度上昇基調となる可能性も出てきた。外為市場でも円高が修正される可能性がある。

ただし、いまのところ金融市場では大きく材料視してはいないものの、森友問題が現政権を揺るがす懸念も出ている。今後の動向次第では金融市場が動揺を示す懸念もあるため注意しておきたい。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年3月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。