【映画評】デイヴィッドとギリアン 響きあうふたり

渡 まち子

幼少期より厳しい父親から英才教育を受け、天才ピアニストとして広く世に知られたデイヴィッド・ヘルフゴット。若くして成功を手にした彼だが、やがて精神を病み11年間もの間、音楽やピアノを奪われて病院で闘病生活を強いられる。ワインバーのピアノ弾きとして社会復帰した彼は、運命の女性ギリアンと出会い、彼女の愛と支えによって、コンサートを再開。ピアニストとして再び花開いていく。そんなデイヴィッドと、妻ギリアンの現在の姿をカメラを追っていく。

第69回アカデミー賞作品賞などにノミネートされた名作「シャイン」の主人公のモデルとなった天才ピアニスト、デイヴィッド・ヘルフゴットと愛妻ギリアンに迫るドキュメンタリー「デイヴィッドとギリアン 響きあうふたり」。「シャイン」から20年もたって作られた本作だが、デイヴィッドとギリアンがいかに深い絆で結ばれているか、そしてデイヴィッドがいかにピュアな人間かを、二人の映像やインタビュー、周囲の人々の証言を交えて、あたたかいまなざしで丁寧に描いたドキュメンタリーだ。

「シャイン」のその後の二人は、自分たちのペースで音楽に向き合っている。誰とでもハグやキスをするデイヴィッドの、時に奇行にも思えるふるまいが周囲をとまどわせても、ギリアンはどこまでも彼に真摯に向き合っていて、その変わらぬ姿が感動的だ。「感謝こそ、人生を幸せに生きる秘訣よ」とのギリアンの言葉が深い。ソウルメイトという言葉は彼らのためにあるような気がしてならない。ちなみに、劇中で一番驚いたのは映画「シャイン」の主役は、当初アメリカではトム・クルーズ主演で進められたという秘話。監督がジェフリー・ラッシュでなければ映画化しない!と断固として譲らなかったそうだ。おかげで私たちは名作に巡り合えた。これこそ感謝!である。
【60点】
(原題「HELLO I AM DAVID!」)
(ドイツ/コジマ・ランゲ監督/デイヴィッド・ヘルフゴット、ギリアン・ヘルフゴット、他)
(二人三脚度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2018年3月14日の記事を転載させていただきました(アイキャッチ画像は公式Twitterから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。