ビールを飲んでも痛風にならない?誤ったプリン体の知識!

尾藤 克之

写真は書籍書影

「太りやすい」「痛風になる」。飲めば飲むことに「後ろめたさ」を感じてしまうビールの魔力。そんな印象を払拭する衝撃の書籍が上梓された。その名も『ビール! ビール! ビール! 』(幻冬舎)。シンプルなタイトルにはビールを最大限愉しむ飲み方と、ビールに関する思いが込められていた。

著者は、医療法人社団大和会「慶和病院」理事長・院長。医学博士。大川章裕医師(専門は脊椎外科)。海外文献にも豊富な知見をもち、ビールと女性ホルモンに関する研究に注目。予防医学や健康に貢献するとして情報公開を積極的に進めている。また、自宅には常時100本以上の世界各国のビールを揃える大の「ビール党」でもある。

ビール市場の環境を理解する

居酒屋の席に座ると、メニューを見ずにビールを注文する人は多い。筆者もまずビールをオーダーする。日本人にとって、ビールは馴染み深いアルコール飲料であり、コンビニなどで手軽に買え、日常的に嗜まれている。「ビール党」を自認し、宴席でも最初から最後までビールだけを飲む人も、めずらしくはない。

「身近な存在ですが、ビールにはなにかと悪評がつきまとっています。「糖質が多く、さまざまな病気を引き起こす」「プリン体により痛風になる」というような、身体によくない飲み物という認識も根強いものがあります。そうした。悪評がつきまとっているビールの、国内のビール市場は縮小を続けています。」(大川医師)

「大手5社が発表した、『2017年3月のビール系飲料の課税済み出荷量』は前年同期比0.7%減で、3年連続で過去最低を更新しました。その理由として、消費者の嗜好が若年層を中心に缶チューハイなど他の酒類へ移る『ビール離れ』が続いていることなども響いていると考えられています。『ビール党』である私としては寂しさを感じます。」(同)

若者を中心に「ビール離れ」が進行していることは筆者も認識している。このような状況が続けば、ビールは日常的な飲み物ではなくなってしまうだろう。まずは、ビールが身体にどのような影響を及ぼすのか正しく理解する必要性がありそうだ。

「果たして本当に ビールは『悪者』なのでしょうか。痛風にもビール腹にもならず、ビールを健康的に楽しむことはできないのでしょうか。そんな思いから、医師である私は、医学的な観点からビールについてのリサーチを続けてきました。そうした結果、『ビールの健康効果』を紐解いた、たくさんの論文と出会いました。」(大川医師)

「老化や病気の原因となる身体の酸化を予防する効果が高かったり、ホップのアロマによるリラックス効果が得られたり さまざまな面で、ビールが健康維持のために一役買ってくれていることが科学的に証明されているのです。結論を言えば、一生健康でいながらビールを飲み続けることは十分に可能です。」(同)

ビールは痛風に悪いのか

厚労省の国民生活基礎調査によると、痛風の患者数は、2013年の時点で1000万人を超えている。現在でも痛風患者数は同程度かそれ以上いると考えられ、痛風の前段階である高尿酸血症を患った心痛風予備軍 も、約1000万人以上はいると推定される。

「痛風は、体内の新陳代謝によってできる尿酸が増えることで引き起こされます。通常、尿酸の体内量はほぼ一定に保たれており作り出された尿酸量とほぼ同量が毎日排泄されています。ところが、何らかの原因で血液中の尿酸量が増えてしまうと高尿酸血症になり、その状態が続くと、ある日発作に襲われます。」(大川医師)

「そして、突然、足の親指のつけ根あたりに猛烈な痛みを覚え、足の甲がぱんぱんに腫れあがります。これが痛風の発作です。痛風を引き起こす尿酸はプリン体が代謝されることで出てくる老廃物です。プリン体を摂りすぎてしまえば、血液中の尿酸が正常値を超え、痛風が発症しやすい状態になります。」(同)

ビールが他のアルコール飲料に比べ、尿酸が多いことは間違いない。350mlの缶ビールは、20㎎ほどのプリン体を含むが、焼酎やウイスキーにはプリン体は含まれていない

「20㎎という量は、豚肉や牛肉100㎎に含まれるプリン体の1/4~1/5の量にすぎません。痛風の患者はプリン体摂取量を1日400 ㎎以内に抑えることが望ましいとされていますが、ビールだけで摂るなら、7l(リットル)ものビールを飲む計算になります。それでも、問題のない焼酎やウイスキーを飲んだ方がいいという声が聞こえてきそうです。」(大川医師)

「実はアルコールを分解する際にも尿酸が生産され、アルコール自体が尿の中に尿酸を排出する働きを阻害してしまいます。ビールだけではなく、アルコール飲料全般に、痛風を引き起こす可能性があるといえます。プリン体以外にも、遺伝や食生活、運動の有暈やストレスなど、さまざまな要因があると考えられています。」(同)

大川医師は、「ビールは確かに痛風と関連があるが、毎日大量に飲み過ぎでもしない限り、直接的なトリガーになる可能性は低い」と結論付けている。医師が、ビールにまつわる誤解を解消するとともに、国内外の論文やデータを分析してたどり着いた、ベストなビールとの付き合い方とはなにか。これからの季節に相応しい一冊である。

尾藤克之
コラムニスト
代議士秘書、コンサルティング会社、IT系上場企業等の役員を経て現職。著書はビジネス書、実用書を中心に10冊。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)が発売後、1週間で重版。現在好評発売中。
個人ブログ:尾藤克之のブックルポ Twitter:@k_bito