議員年金復活に反対の意見書可決:西東京市議会にあっぱれ!

佐川前国税庁長官の証人喚問で目新しい事実は出ず、予算が通過して政局が「凪」に入ったようにみえるが、ドサクサに紛れて妙な法案が通過しないか注意したいのは毎度のことだ。その一つが地方議員の年金復活問題だが、地味な話題とあって、都議会では維新(やながせ都議)やおときた君が指摘しても不発どころか、小泉進次郎さんの発言(参照:弊Vlog)をもってしてもいまひとつ世論に火がつかない。

自公両党が法案化への準備を着々と進めていく中で、当事者の地方議会では復活を要望する意見書が続々と可決されている。「議員のなり手不足」を理由にしているが、国民との格差是正の声に押されて国会議員の年金は2006年に、地方議員は2011年にそれぞれ廃止された経緯を国民が忘れている間に、ちゃっかり復活させようという動きには辟易とする。

そんな中、先日、知り合いの区議会議員の情報などで知ったのだが、東京・西東京市議会で3月末、議員年金復活に反対する意見書が可決されたというのだ。「そんな奇特な議会があるのか?」と半信半疑でグーグルニュースで検索しても大手媒体の記事が見当たらない。そうしたら西東京のローカル情報を積極的に発信しているツイッター民の方からの情報提供で、地元メディア「ひばりタイムス」で概要がうかがえる記事は載っていたのを知った(当該記述は中盤)。その後、市議会のサイトをみてみると、議事録のアップは数か月先なものの、意見書が議決されていたことは確認できた。

復活への賛否:自民も左派野党も入り乱れの構図

ひばりタイムスの記事で興味深かったのは、自民党も国政のリベラル野党も分裂気味で、議員個々の意見が入り乱れた様相になっていたことだ。すなわち意見書の提案者が自民の1人の市議で、賛成に回ったのは、もう1人の自民市議のほかに立憲民主党や生活者ネットなどの市議たちだった。自民の多数と公明は当然のことながら反対に回ったが、この手の議題でほかの左派野党と同調することの多い共産が反対していたことも印象に残った。

共産の議員年金復活への見解は、どんなものなのか?同じ議員年金復活反対の意見書が出た大田区議会の共産区議団のブログがわかりやすい。なお、こちらの方は意見書が否決され、大田区議会としては議員年金復活を容認した形だ。共産のブログでは反対ありき(=議員年金復活ありき)でぐちゃぐちゃとロジックを組んでいるが、代々木の本部の見解はこれらしい。

地方議員がその役割を果たすために、議員在職中の生活収入を得るための就業に制約があることは考慮すべきであり、経済的余裕のある者しか地方議員になれない状況を避けるためにも、議員退職後のなんらかの生活保障の検討が必要である。

結局、推進している自公の言っている文脈にプラスして、経済格差是正という独自スパイスをまぶしているようだが、保守側の有権者からみると同じ左派のようでも生活者ネットの見解は、議員特権廃止の見地から一貫して反対していて、国民年金の問題を同じく意識しながらも共産とは真逆の結論になっている。

この問題は、与野党、保守リベラルが混濁している様相だ。あえて乱暴に賛否の傾向を区切ると、私の印象では「年配層は復活賛成、若手は反対」という世代間の差もあるようにみえる。国政の自民党でも本音は反対している議員は少なくない。選挙で無敵の進次郎さんは、そうした“隠れ同志”の声を代弁しているのだろう。

なぜイデコじゃダメなのか?そもそもの議会のあり方論は置き去り

人並み以上の歳費をもらっている地方議員が、「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)」を活用するのがなぜダメなのか?逆に、小規模自治体の議員は、もともと兼業でやっているところも多いわけで、自分で年金を運営できるのではないか。あるいは、もっとブラックなことを言ってしまうと、この先の人口減少に伴う税収不足で住民サービスの低下が必至の地域が増えるのは確実なわけだから、いまなぜわざわざ公費負担を増やすようなことをするのか。

Vlogでも紹介したように、総務省に設置していた「地方議会のあり方に関する研究会」は、小規模自治体の議会運営に関して大胆な見直しを提言している。そもそも論として、そっちの検討すらしないで年金復活ありきという、いまの流れは解せるものではない。

とりあえず、政界における国民の意識と乖離した妙な潮流と一線を敷いた西東京市議会の意見書可決には、張本さんになったつもりで「あっぱれ!」と申し上げておこう。