日本のドラマや小説では、よく「悪役のお金持ち」が登場する。
貧しいヒロインをいじめるお金持ちの鼻もちならないお嬢様。
お金持ちで威張っているボンボンを貧乏な主人公が叩きのめす物語…等々。
「ドラえもん」に登場するスネ夫も(悪人ではないが)その類に入るのだろう。
「お金持ち=悪人」「貧乏人=善人」というステレオタイプが形成された理由については、以下のような背景があるのかもしれない。
江戸時代も後期になると、貧しい武士階級に対して豊かな商人階級が急増した。
卑しい身分の商人が贅沢をするのは許せないという武士の嫉妬がつのりつのって「お金持ち=悪人」という構図ができたのかもしれない。
経済を疲弊させる質素倹約例が出されたのも、武士の商人に対する根強い嫉妬心が背景にあったとも考えられる。
戦後、日本で盛んになったマルクス主義に代表される共産主義思想は、労働者が資本家に搾取されているというのが基本構造だ。
ブルジョアジーは国家体制と共に、革命によって倒すべき敵だ。
ブルジョアジーの典型である「お金持ち」は倒すべき「悪」でなければならないという思想背景が、現在でも根強く残っているのかもしれない。
このような偏った思想を論破しているのが、「お金で損しないシンプルな真実」(山崎元著 朝日新聞出版)の「はじめに」に書かれている以下の表現だ。
誰かが自分にしてくれた「いいこと」に対して、「感謝のしるし」を支払うのです。それを受け取ったその人は、また別の誰かに対して支払いをすることができます。そのようにこの社会をぐるぐるとめぐっているのが、お金です。
お金を「感謝のしるし」をと捉え、お金を汚いものだと身構えるのは考えものだ、と説いている。
財やサービスはグッズ(goods)、つまり良い物なので、それらを提供された対価として支払われるお金は「感謝のしるし」に他ならない。
私は二度ほど、大病院の窓口で「医は仁術じゃないのか!算術なのか!」と怒鳴っている男性を見かけたことがある。「感謝のしるし」であるお金を支払おうとしないのだから、究極の恩知らずと言う他ない。
お金持ちは、たくさんの財やサービスを提供し、その「感謝のしるし」としてお金を受け取った人たちだ。詐欺や恐喝でもしないかぎり、不要な財やサービスに対してお金を支払う人はいない。
このように考えると、お金を稼ぐことは人々の役に立つことを一生懸命やっていることであり、「お金持ち=悪人」という図式が誤りであることは明白だ。
税収とて、たくさんお金を稼いでいる人によって成り立っているのが実情だ。
最後に、本書の中で私が笑ってしまった部分をご紹介しよう。
「お金の増やし方」がよくわからなくて、誰かにアドバイスを求める時に、相手はお金を扱うプロだというイメージから、銀行や証券会社などの窓口に相談に行ってしまいがちです。
しかしこれは、赤ずきんちゃんがオオカミの家に人生相談に行くようなもので、論外の愚挙です。
本書を一読して、あなたが決して「赤ずきんちゃん」にならないことを祈るばかりだ。
編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年4月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。