安倍首相は都構想反対
13日、安倍首相が大阪へやって来た。そして、「大阪都構想に反対」と明言した。驚いた。首相は都構想に賛成という共通認識がこれまであったからだ。13日付けの毎日新聞の記事には以下のようにある。
自民党総裁の安倍晋三首相が13日、大阪市を廃止し特別区に再編する「大阪都構想」に「反対」と述べ、再度の住民投票実施に否定的な認識を自民党大阪府連に示したことが分かった。
安倍首相は憲法改正を目指しており、「日本維新の会」と連携し、より多くの改憲勢力を形成しようとしている。「維新」に対する首相の気遣いは尋常ではなく、これまでも、橋下徹前代表や松井一郎代表と度々、会食してきた。
「維新」はハシゴを外された格好だ。松井代表は相当、怒っているらしい。14日付けの読売新聞には以下のようにある。
日本維新の会の松井代表(大阪府知事)は13日、安倍首相が大阪都構想に反対する考えを示したことについて、「(自民党大阪府連への)リップサービスが過ぎるかなと思う。前は住民が決めるものだと言っていた。それだけ追いつめられているのかね」と述べ、不快感を示した。
自公ともに反対がハッキリ
追いつめられているのは松井維新代表だ。最近、NHKが大阪府民を対象に行った世論調査によると、都構想に賛成の人は27%しかなかった(2018年4月3日公表)。これでは、実現は程遠い。
橋下氏からも都構想の住民投票を先送りするべきという後ろ向きの発言もあり、そうした状況で、この度、安倍首相が「都構想反対」と言ったものだから、松井代表ら「維新」はショックが大きいだろう。
自民党は、総裁がハッキリと「反対」と言った。実は、公明党もハッキリと「反対」と言っている。昨年の総選挙期間中、公明党大阪府本部代表の佐藤茂樹衆議院議員は自民党大阪3区演説会(10月13日開催)で以下のように発言した。
国政の話をする前に、一言申し上げたいと思います。公明党は、政令指定都市大阪市をなくす都構想には、絶対に反対でございます。大阪市を、どんなことがあっても守り抜いていく。そのことは、この担当している市会議員、府会議員だけでなく、私たち、この大阪・関西の国会議員の一致した意見でございます。
(映像リンクはこちらから)
公明党は2015年、「維新」に気遣う安倍首相に配慮して、住民投票にも応じた。官邸が「一度、住民投票をやってみてはどうか」と提言し、公明党と「維新」を仲裁した。
しかし、13日、首相は「住民投票はしょっちゅうやるものとは違いますね」(産経ニュース)と述べ、2度目の住民投票は行うべきでないという認識を示したのだ。大阪公明党は2015年に官邸の提言を受け入れたように、今回もやはり、首相の提言を受け入れ、粛々と住民投票実施に反対するべきだ。
都構想だけが「維新」ではないことを示せ
「維新」は大阪で、これまで、着々と業績を積み上げてきた。私は自民党の支持者なので、「『維新』は何もやっていない」という論評をよく聞かされるが、そんなことはない。「維新」も頑張っている。待機児童解消、教育費無償化、行政のムダ削減と効率化、地下鉄民営化、慰安婦像設置に伴うサンフランシスコ市姉妹都市提携解消など、功績はたくさんある。また、彼らはIR誘致・万博誘致にも力を入れ、頑張っている。
「維新」は地道な改革を一つ一つ積み上げていくことで、充分に大阪の有権者の支持を得られる。都構想などという何の得にもならないエセ改革に邁進せずとも、改革の課題やネタはいくらでもある。
都構想だけが「維新」ではないということを示すためにも、都構想実現を一時停止し、「都構想をはじめとする都市行政機構の改革という大問題については、長期的な課題として取り組む」というくらいのことを言ってみたらどうか。「断念する」とは言えないとしても、「長期課題にする」くらいは言えるだろう。
有権者の中には、「『維新』を応援したいけれども、都構想で大阪市がなくなるのは困る」と考えている有権者は多い。都構想は大阪市民のためにはならないのはもちろんだが、今や「維新」のためにもならない。