【映画評】トレイン・ミッション

渡 まち子
トレイン・ミッション

10年間勤めてきた保険会社を突如リストラされた60歳のマイケル。今後のローン返済や子どもの学費などが頭によぎり、憔悴しながら、いつもの通勤電車で帰路についていると、突然見知らぬ女から声をかけられ奇妙な提案を受ける。それは、ヒントを頼りに、乗客の中から大切な荷物を持った人物を捜し出すというもの。10万ドルという高額な報酬にひかれて引き受けてしまったマイケルだが、やがてそれはマイケルの妻子をも危険にさらす恐ろしい罠だと知る…。

サラリーマンが通勤電車で恐ろしい陰謀に巻き込まれるサスペンス「トレイン・ミッション」。走る列車の中という密室を舞台にするサスペンスは、ヒッチコックを例に出すまでもなく、面白いものが多い。本作もまたその系譜に連なるもので、ある意図を持って陰謀を企てる犯人にうっかりノセられた主人公の奮闘記としてはなかなか上手くできているし、限定空間と制限のある時間で緊張感があるのもいい。とはいえ、実はツッコミどころも多く、その目的のためなら、もっと確実で簡単な方法があるだろうに…と思ってしまうが、それは言わないお約束だ。

日常的に使う通勤列車で乗客はほとんど顔なじみという設定が効いていて、次々に起こるトラブルと新事実の発覚で退屈はしない。50代半ばにして突如アクション・ヒーローとして覚醒したリーアム・ニーソンが、今回もまたはりきっていて、リストラにあったサラリーマンというくたびれた役柄ながら、元警官という設定でなんとか大活躍のつじつまを合わせている感じだ。ラスト、その人が再び姿を現す必要性はないとはいえ、主人公マイケルの鮮やかな対応でスッキリと終わるのが嬉しい。
【55点】
(原題「THE COMMUTER」)
(アメリカ/ジャウマ・コレット=セラ監督/リーアム・ニーソン、ヴェラ・ファーミガ、、他)
(密室劇度:★★★★☆)

この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2018年4月16日の記事を転載させていただきました(画像は公式Facebookページから)。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。