14日の予算委員会集中審議で、北朝鮮問題を取り上げました。
融和ムードでも安心はできない
6月12日にシンガポールで米朝首脳会談が開催されることが決まり、融和ムードが広がっていますが、まだまだ安心できません。
特に、日本にとっては、懸念も多いと考えています。
拉致、核、ミサイルの3点セットの包括的解決が、我が国の国益であることは間違いありません。
このうち、核については、CVID(完全かつ検証可能で不可逆的な破棄)の確実な合意が必要です。この点、日米では意識を共有しているようですが、残念ながら、南北首脳会談後の共同声明や、先日の日中韓首脳会談の共同声明にも、非核化は出てきても、CVIDの言葉は出てきません。北朝鮮が主張している「段階的」という言葉も気になります。
アメリカのトランプ大統領も韓国のムン大統領も、北朝鮮による「壮大な時間稼ぎ」に付き合わされているのではないか、正直、私は心配しています。
米朝会談で、「CVID」あるいは「リビアモデル」で合意できるかどうか、厳しく見定めていかなくてはなりません。
我が国の国益は中距離ミサイルの廃棄
もっと心配なのは、ミサイル問題です。
そこで予算委員会では、特に、中距離ミサイル「ノドン」廃棄の可能性について安倍総理に質問しました。
トランプ大統領は、間違いなく、ワシントンなどアメリカ本土に届く可能性のある火星15などICBMの廃棄は強く求めるでしょう。
しかし、その一方で、ノドンやスカッドERのような中距離・短距離のミサイル廃棄は本気では求めない可能性があります。
中・短距離ミサイルは北朝鮮にとって外貨獲得の手段でもあります。非核化など北朝鮮から得るものを得るためには、彼らに譲るものも用意しなければならないのが「ディール」の本質です。
また、これらのミサイルまで廃棄されてしまうと、ミサイル防衛の必要がなくなり、アメリカは日本に、イージス・アショアなどの装備を売ることができなくなるという、ビジネス上の観点もあるでしょう。
とにかく、日本にとって重要なのは、日本に届くノドンが廃棄されるかどうかです。
ですから、トランプ大統領が中途半端な妥協をしないよう、安倍総理に対して、「ノドンの全廃なくして経済支援なし」と明言してはどうかと提案しました。
日本の国益を実現する一つの戦略になると考えるからです。
しかし、安倍総理はいつものとおり、だらだらと答弁するだけで、質問に答えようとしませんでした。
それどころか、なんと、麻生大臣からは、
「自分がしゃべりたいんだよ、この人は」
というヤジが飛んできました。
安倍総理もヤジを飛ばしていました。
信じられない光景でした。
私としては、安倍総理に「ノドンの廃棄なくして、日本からの経済支援はあり得ない」と明確に答えてもらいたかったので、極めて残念です。
日米の国益が対立したとき、総理の判断は
我が国の利益は、米国の利益と必ずしも同じではありません。
トランプ大統領は、中間選挙をひかえていることもあり、米朝首脳会談の「成功」にこだわるでしょう。日本が、その「成功」の演出につき合わされ、日本にとっては不十分な合意内容にもかかわらず、経済支援の「請求書」だけ日本に回される可能性も否定できません。
また、在韓米軍が縮小するような結果になれば、38度線がプサンか対馬に南下することにもなります。日本の安全保障にも大きな影響が及びます。
だからこそ、ここは、米国の国益ではなく、あくまで日本の国益を死守する外交が求められる局面なのです。
私たちの子や孫が、北朝鮮からのミサイルにおびえる生活を続けるのか、そうした脅威から解放された生活を送れるのか、国益をかけた重要な局面なのです。
だからこそ、建設的かつ本質的な論戦を心がけていたのに、閣僚がヤジで議論を混乱させる…
もっと本質的な議論をしたかったのに、残念でなりません。
とにかく、ノドンやスカッドERが温存されるなど、米朝首脳会談の合意内容が中途半端なものにおわり、にもかかわらず、経済支援の名の下に、何兆円ものお金が、長期にわたって北朝鮮に流れ続けるような事態は避けなくてはなりません。
国益にかなう外交となるよう、納税者のお金が無駄に使われないよう、政府の姿勢を厳しくチェックしていきます。
編集部より:この記事は、国民民主党共同代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2018年5月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。