米中間の通商摩擦は、収束に向かうのか否か。
米中通商協議が続くなか、トランプ政権が中国からの米国進出を許容している分野があります。新規株式公開(IPO)がそれにあたり、ルネッサンス・キャピタルによれば、1~3月期のIPOのうち中国企業は全体の約5分の1を占めていました。IPOを実施した中国企業は8社で、資金調達額は33億ドルと過去3年間で最高だったといいます。特に動画配信会社iQIYIが23億ドルの調達に成功し、全体額を押し上げました。
中国企業のIPO、株価上昇の恩恵がアメリカ人の懐を潤すならトランプ大統領は黙認?
トランプ大統領が容認していても、中国政府は黙っていません。中国証券監督管理委員会(CSRC)は3月30日、ハイテク企業に対し中国預託証券(Chinese Depositary Receipt、CDR)を通じた本土上場を承認する試験プログラムを発表しました。同プログラムにより、①本土回帰、②株価上昇に伴う利益確保、③中国企業の本土回帰――を目指します。
通商摩擦の裏で、中国は強かに海外からの資金流入にも狙いを定めています。モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)は2017年6月に中国本土A株をMSCI新興国株指数に採用すると発表、今年5月から2段階に組み入れる予定です。流入額は5,000億ドルとも試算されていますよね。その時期に人民元の流動性拡大をにらんだ事情があったのか、ブルームバーグ・バークレイズ指数は、中国の人民元建て国債と国営銀行債券の指数採用を決定、2019年から実施する方針です。中国当局が決済や課税の条件などで透明化を図る必要が生じるだけに、9兆ドル規模と米国と日本に次ぐ巨大な中国債券市場の流動性改善に、本腰を入れたことは間違いありません。
通商摩擦の陰で中国が資本市場での存在感を高めつつあるのは、間違いなさそうです。
(カバー写真:Pamela Drew/Flickr)
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2018年5月15日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。