5月に入り、債券市場が膠着感をより強めてきた。そのひとつの要因が5月1日からの国債の決済のT+1始動がある。特にレポ市場への影響などを見極めたいとして、市場参加者が売買を控え、様子見気分を強めた面はあった。
ただし、その国債の決済のT+1がスタートした大型連休の狭間でもある5月1日と2日の債券先物の出来高が両日とも2.9兆円程度出来ており、値幅は1日が16銭、2日が15銭となっていた。現物債の商いも1日が3500億円程度、2日には6500億円程度あった。それほど多いわけでもないが、先物もそこそこ動いて、現物債もそこそこ出合いがあったといえる。
ところが、大型連休明けとなった5月7日の債券先物の出来高は1.5兆円程度に減少し、値幅は6銭しかなく、現物債の出合いは1100億円程度しかなかった(15時現在)。通常の休み明けとなる月曜日は閑散相場となることが多く、個人的に「月曜相場」と呼んでいる。これが大型連休明けということで、投資家にとっては会議等が入り、商いが細くなるのはいたしかたないと見ていた。ところがである。
翌8日の債券先物の出来高も2.1兆円程度、値幅6銭、現物商いは2200億円程度しかなかった。9日の債券先物の出来高1.9兆円程度、値幅7銭、現物商いは1900億円程度。10日にいたっては先物出来高1.4兆円程度、値幅6銭、現物商い2400億円。11日は先物出来高1.4兆円程度、値幅5銭、現物商い3000億円程度。
そして週が変わって14日の現物債は、前場にカレントと呼ばれる直近発行された2年、5年、10年、20年、30年、40年の新発国債がすべて出合いなしという異例と事態となった。この日の債券先物の出来高は1.2兆円程度、値幅6銭、現物債の商いは1600億円程度となっていた。15日はやや増えて債券先物の出来高は2.8兆円程度、値幅9銭、現物債の商いは500億円程度となっていた。
日銀の異次元緩和により、国債が大量に日銀在庫として積み上がり、イールドカーブコントロールまで導入して、長期金利をコントロールするという異例の政策によって、債券市場の機能は低下しつつあったが、ここにきてそれが顕著に現れてきたようにも思われる。
今年度入りした4月から国債の市中での発行額が減額されているが、日銀の買入ペースは変わらず、それが市場での流通玉を減少させている面もある。かろうじて商いが続いていた日本の債券市場が、このまま干上がってしまう懸念すらある。
黒田総裁の会見等をみても、日銀としては意地でも物価目標の看板は下ろすつもりはないようであるが、物価目標達成の前に債券市場の機能停止が先に達成してしまう可能性もある。そこまでして物価目標を達成する必要かあるのか。そもそも国債市場を機能停止状態にしてまで中央銀行が国債を買い入れて、それで本当に日本経済にとって良い物価上昇に繋がる保証があるのか。ここにきての債券市場の機能低下は、もしかすると債券市場参加者が気付かぬうちにストライキ行動を起こしていると言えるのかもしれない。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2018年5月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。