四半世紀を経て深化したJリーグと水環境との関係性 --- 奥田 早希子

寄稿

5月15日は日本初のプロサッカーリーグ「Jリーグ」が開幕した日だった。あれから四半世紀が過ぎた。この間、一貫して地域密着型のクラブチーム作りを理念とし、福祉や教育などサッカー以外の面でも地元行政や商店などとの協働が進められてきた。

環境活動はその1つだ。J1クラブの取り組みを見ると、スタジアムでの分別回収や試合後のゴミ拾い、地域の清掃活動への参加などは、ほとんどのクラブで取り組まれている。

その中でも水に関係する取り組みに注目してみると、北海道コンサドーレ札幌が2008年にスタートさせた「コンサ百年の森づくり」がある。台風で木々が倒された支笏湖周辺の国有林に、2年間で約8,000本を植樹したという。下流域の安全性確保や、川や海の豊かさの維持にもつながるだろう。

鹿島アントラーズは、家庭で使い終わった食用油を回収し、バイオディーゼル燃料(BDF)へと精製し、チームトラックの燃料として活用した。373世帯から336リットルの廃油が集まったそうで、チームトラックによって選手たちのユニフォームやスパイクなどの用具類が運ばれた。

食用油を台所から流すと排水管がつまったり、下水管の腐食を早める恐れがある。ウェスや新聞紙などに吸わせたり、固めたりして捨てるのもいいが、こうした取り組みがあれば選手たちを身近に感じられるという特典もついてくる。この取り組みは「第3回クールビズ・オブ・ザ・イヤー」(クールビズ推進協議会)の部門賞「クールビズ・アース2009」を受賞している。

各クラブのサイトを調査したところ、ジュビロ磐田の天竜川とその水源となる森を守る活動、名古屋グランパスの堀川浄化活動などがある。

J2クラブではあるが、FC町田ゼルビアのマスコット・ゼルビーは水に関して勉強意識が高い。2017年に都内で開かれた「下水道展」という展示会を訪問し、パートナー企業である管清工業のブースで下水管のメンテナンス技術を学んだ。国内の多くの下水管が老朽化しているが、地下に埋まっているのでなかなか危機感を共有できない。ゼルビーを介して関心が高まることに期待したい。

以前に清水エスパルスのサポーターにエコ活動への取り組み意欲を聞いた際、「エスパルスがやるなら僕もやる」と答えていたことを思い出す。クラブや選手がまずやって見せることが、多くのサポーターやファンを動かす強い力になる。次の四半世紀に向け、Jリーグの各クラブチームと水の関係が深化し、一人一人の行動につながっていくことを願う。

最後にJ1クラブのそのほかの特徴的な環境活動をまとめておく。

奥田 早希子
「環境新聞」で水担当記者として11年間務めたのち独立。東洋大学社会人大学院経済学研究科公民連携専攻を修了し、PPP(公民連携)へと活動領域を拡大。Webジャーナル「MizuDesign」編集長、東洋大学PPP研究センターリサーチパートナー