IEC System Committee Active Assisted Livingの日本招聘会合がお茶の水で開催されている。その機会を捉え5月30日に「日常生活支援」についてワークショップが開催された。
第一部は医療・健康情報の活用。カナダは、慢性疾患患者を遠隔でモニターするシステムの開発状況について報告した。都市がまばらに分布し人口密度が低いので、カナダでは遠隔医療へのニーズが高い。肺疾患・心臓疾患の患者を対象としたオンタリオ州の実験では、毎日血圧や脈拍などの生体情報を測定し、これを受信した病院で異常を見つけると警報が鳴るようになっている。異常時には電話で指導したり看護師が面会したりして対応する。1400人の患者が参加しているそうだ。この実験は、日常生活を患者自身でコントロールできるようになるのを目標にしている。ケベック、ブリティッシュコロンビア、ニューファンドランドなどでも、糖尿病患者なども対象にして多様な実験が実施され、遠隔医療の経済効果を検証しようとしているそうだ。
わが国からは、問診情報を効率的に収集するNECのシステムが紹介された。すでに実用化され小児科での利用が多いという。小児科には多様な感染症にかかった子供が来るので、通院前に熱や頭痛、発疹などについて情報が収集できれば役に立つ。
第二部はロボットのセッション。トヨタは歩行支援ロボットや日常生活支援ロボットを紹介した。自動車会社から人々のモビリティを支える会社へと変身中のトヨタは、これらのロボット開発に熱心である。産業技術総合研究所は生活支援ロボットの安全基準について講演した。生活支援ロボットは多様な人が利用するため、利用者に倒れ掛かって怪我させるというような事態は避けなければならない。産総研が提案して、すでに国際標準ISO 13482が出版されている。
第三部では、住宅内の機能安全についてミサワホーム総研から講演があった。IoTをはじめとして様々な機器が住宅内に持ち込まれ、それらがけんかして間違って動作すると事故が起きる。室温を測って窓を開ける機器と防犯のために窓を閉める機器が同時に信号を送ったら、窓は開くのだろうか、閉まるのだろうか。
満席の会場からは、日本招聘会合に参加中の外国からの専門家を含めて、多くの質問が出た。高齢者が自立して生活するのを支援するために、これらの技術を活用したビジネスが立ち上がる時期が近づいていると感じさせるワークショップであった。
山田 肇
『ドラえもん社会ワールド 情報に強くなろう』監修